発する言葉でどこを見ているのかが分かってしまう

 言葉の違いは、目線の違いでもあります。先ほどの例で言うと、店長の目線は、売上げを上げることです。一方、アルバイトさんの目線は、仕事を滞りなく終わらせることです。つまり、ゴールをどこに設定するかで、言葉も変わるし、意識も変わってしまうのです。

 他のカフェでは、このような出来事もありました。ホットコーヒーを注文したところ、私の目当ての種類が切れていたようで、店員さんが

「10分ほどお待ちいただければ淹れたてのものをご用意できますが、いかがでしょうか」

 と聞いてくれました。普段このようなパターンだと、「申し訳ございません。ただいま切らしています。他のコーヒーでしたらすぐお出しできるのですが」と言われることが多かったので、新鮮でした。しかも「淹れたて」を私のために用意してくれる、という特別感が味わえて、朝からなんだか嬉しくなりました。

 とはいえ、急いでいる人が多いカフェだとしたら、後者の「すぐ出せる」がお客様にとっての価値かもしれません。お店のコンセプトや店の状況によって価値は変化します。このカフェは店内を「第三の場」としてゆっくり過ごしてもらうのがコンセプトです。ですから、店員さんの「10分待って、淹れたてを楽しんでもらいたい」という言葉が、心に響くのです。

 彼女はお店のコンセプトをしっかり自分のものにして、お客様のこともきちんと見ているんだな、と感じ、ますますそのカフェが好きになりました。