分かってもらうためには「共感」の後に「論理」で攻める

 では、あなたが提案するアイデアが相手の悩みを解決できるということをしっかり伝えるためにはどうすれば良いのでしょうか。

 一般的にビジネスコミュニケーションにおいては論理展開が大事だと言われることが多いですが、実は論理の前に必要なのは「共感力」です。ただし、ここで言う「共感力」は、ただ相手の話を聞いて「うんうん、わかるよ」というだけのものではありません。相手の不安・不満・疑問をクリアにすることで、「この人は私のことを分かってくれている」と思ってもらうことが、ここで言う「共感力」です。

 いきなり相手の問題点を指摘したり、新しいアイデアを提案したりするのではなく、次のような不安をきちんと明確化し、あなたが不安に思っていることを私は分かっていますと伝えた上で、それらの不安をあなたの提案で解決することができないかを考え、伝えるクセをつけていきましょう。

「驚き」ではなく「共感」で説得する具体例

 例えば、あなたが企業の広報担当で、決算発表会の資料作成を任されたとします。決算発表を聞く相手となるアナリストの人たちの興味や不安は、「好調/不調の原因は何か?」「今後どんな対策を考えているのか?」「今後も持続的な成長が可能なのか?」といったものです。ですから、その疑問や不安を明確化したあとに自分のアイデアを出していきましょう。

 同じ広報の仕事でも、アナリストではなくマスコミに向けた対応の場合は、マスコミの興味の先は「話題になりそうなネタはないか? 新製品は何か?」かもしれませんし、企業の製品のファンの人に向けた「ファン感謝祭」のようなイベントだとしたら、「新しいワクワクを見せてくれるか? いち早く手に入れたら自慢できるか?」かもしれません。相手にそった期待や不安を最初に示してからアイデアを発信していくことで、わかりやすさは格段に上がります。

 例えば、あなたがオフィスデザインを提案する営業部隊のメンバーだとしたら、営業対象のクライアントはオフィス家具やインテリアを一新させることで、「快適さ」「創造性」「チームワーク」が向上することが大切だと思うでしょう。その場合は、相手がいかに「快適さ」「創造性」「チームワーク」を大切にしているかを、私たちはよく分かっていますよ、という姿勢を全面に出し、その後で相手の「困った」を解決するために自社製品や自社のインテリアデザインがどう役立つかをプレゼンすればいいわけです。

 まずは相手の期待は何かをしっかりと探り、きちんと受け止めるための材料を準備していきましょう。このひと手間を加えるだけで、あなたの主張やアイデアが格段に通りやすくなりますよ。

文/池田千恵

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