「ルールだから」の甘い罠に陥るな

どのルールなら変えられるの? (C) PIXTA
どのルールなら変えられるの? (C) PIXTA

 「ルールだから」の一言には、思考停止を招く甘い誘惑が混ざります。制定した人が「こういうルールだから」と伝えると、聞いた人はほぼそのルールを疑いもなしに受け入れてしまいます。何も考えずにルールに従っておけば、とりあえず誰からも注意されることもなく、楽だからです。

 しかし、「本当はこうしたいというアイデアがあるのに、ルールにのっとってプレゼン資料を作るとうまくいかないから、ルール通りにできるアイデアに変更する」というのは、本質からずれています。自分が信じる意見を相手が聞いてくれるようになることが目的でプレゼンの手法を学んでいたのに、いつのまにか、うまいプレゼンをするために自分が信じる意見を消してしまったからです。つまり、目的と手段がいつのまにか入れ替わっているのです。

 「ルールだから」と思考停止するのに慣れてしまうと、後に「ゆでガエル現象」に陥ります。ゆでガエル現象とは、緩やかに温度が上がる水の中にカエルを入れると、温度の変化に気付かないうちにゆであがって死んでしまうことを例えています。人や組織もゆっくりした環境の変化には気が付きにくく、気付いたら致命的な状況に至って、逃げられなくなることの例え話です。

「ルールだから」
「そういうことになっている」

と、ルールを絶対に変えられないものとして物事を進めようとする自分に気付いたら、「ゆでガエル」の思考に陥っているサインだと思っていいでしょう。