“控えめ”はもはや美徳ではない

 私は女性活躍の推進の流れから女性のキャリア形成、ダイバーシティなどをテーマに「伝わる」コミュニケーションについて登壇をしているため、30代女性の悩みを聞く機会が多いのですが、そこで常々もったいないなと感じていることがあります。それは、女性の良さである控えめさが行き過ぎてしまっている人が多い気がするのです。ガツガツしない、控えめというのは美徳ではありますが、それが行き過ぎると、あなたの実力や実績までも、他の人の前に霞んで見えてしまうのです。本当はとても実力があるのにもかかわらず、です。

 しかし、そうなってしまうのも仕方がないことかもしれません。というのも、ネットやSNSが氾濫し、情報を絶えず摂取するのが当たり前になった昨今、「自分よりもはるかにすごい人」の言動はより良く見えるようになってしまうからです。人は人、自分は自分と頭の中でわかってはいても、目に入る派手なところだけにスポットライトが当たってしまうのは無理もありません。

 そこで思い出して欲しいのが、先に述べたとおり、嫉妬している相手は自分にも起こりうる未来をちょっとだけ先に見せてくれる存在だということ。自分よりはるかにすごいと思える人だって、一歩一歩階段を上って今の環境を手に入れた同じ人間であることがほとんどです。

 「あの人と私は別」と、最初から限定された条件で思考するのに慣れてしまうと、「自分ができるのはこんなもんだ」「自分の稼ぎ力だとこのくらいが適当だから」「本当はこうしたいけど、いきなり人格が変わったみたいで周囲からどう思われるか考えると恥ずかしい」というように、いつも周囲の目を気にして、思考の制限をつけた目線で物事を考える癖がついてしまいます。

周囲の活躍にモヤモヤしたら自分の本心を見つめよう

 「私は自分に多くを期待していない」という方は無理矢理自分を変える必要はありません。人にはそれぞれの考え方があります。ただ、嫉妬なんてしていないと心の中では思いつつも、「あの人うまくやっちゃって」とモヤモヤしたまま今の状態に甘んじている自分と、「実力不足かもしれないけれど飛び込んでみよう!」と失敗を恐れずに挑戦する自分、どっちがかっこいいと思いますか?

 「もっと評価されたい、私はまだまだこんなもんじゃない」という気持ちが少しでもある人には、ぜひ「発信力」を身につけていただきたいのです。

 仕事でもプライベートでも、あなたがどんな想いを持ち、何をしていきたいかをしっかりと周囲に伝えることができるようになれば、

●あの人に頼んでおけば安心だ

●あの人なら間違いない

●あの人の活動を応援したい

という信頼関係をベースにご縁を繋いでいくことができるようになっていきます。

コミュニケーションに関わるすべてはプレゼンから

 「発信力」というとプレゼンテーション、発表をイメージする人は多いでしょう。プレゼンという言葉に拒否反応を起こして「私には関係ない」と思われる方もいますが、コミュニケーションに関わるものはプレゼンです。お昼に何を食べたいか、気になる相手をどうやってデートに誘うか、同僚や上司と良い関係を築くために考えること、すべてプレゼンなのです。

 今は実力が伴っていなくても、抜擢されるという背伸び体験を一度してみると世界が変わります。背伸びが人を成長させるのです。最初は格好悪いこともたくさんあるかもしれません。

 今までにないチャレンジを続けると、自分のダメなところもたくさん見えてきますが、ダメなところが見えたらしめたものと思ってください。心の中であれこれと考えているだけでは見えなかった自分の「のびしろ」が、どんどん伸びていくことを実感するはずですよ。

 次回(2月19日金曜日)からは「しなやか発信力」を身につける具体的な方法を解説していきます。どうぞお楽しみに。

文/池田千恵、写真/PIXTA

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