日本人は相手の立場に立つことは得意?
クラスメート全員が同じ国や文化の中で育っている場合は、どこか以心伝心で通じ合えるかもしれないが、多様なバックグラウンドを持つ人間同士がお互いから学ぶためには、このような共有事項はが欠かせない。そして、NORMSで必ずといっていいほど出てくるのは、「ステップダウン、ステップアップ」というフレーズ。既に発言が多い人は控えて、少ない人は発言を増やすという意味だ。
私は、相手の立場になって考えることは、日本人なら当たり前にできていると、最初は思っていた。でも、それはあくまでも同じ日本人同士の中にいるときの話で、多様なバックグラウンドを持つクラスメートたちの立場にたって物事を考えることは非常に難しい。
自国を捨てて逃げてきた難民のクラスメート、LGBTであることを親に話せていないクラスメート、日々差別と戦っている黒人のクラスメート・・・とりあえず人の意見を聞くことは簡単だ。しかし彼らの話す言葉の本当の意味をくみ取って理解することは、難しい。
そして、周囲の意見を考慮した上で、機を見て自分の意見をはっきり伝える。誤解のないよう言葉にも気を配る。留学生活は、異なる立場の人に寄り添って、その心にできるだけ近づける人間になる、特訓の日々でもある。
文・写真/大倉瑶子