単身で海外に駐在するほど、キャリアを積んできた商社勤務の向山淳さん。夫のハーバード留学を機に、自身が積み上げてきたこれまでのキャリアとこれからの人生の狭間で悩み、「仕事を辞めて、夫の留学に同行する」という人生を変える決断をした。こうした経験から向山さんが得た人生観とは?(後編)。


 向山さんが、単身カナダに駐在していたとき、日本でその話をすると、「えー大変!」「すごい!」というような反応を受けることが多く、親より上の世代からは、夫を放置していることに怒られることもあったという。しかし、ハーバードの夫のクラスメートは、遠距離の夫婦生活に全く違和感を示さない。「トロントの会社では何をやっていたの?」と自然に会話が始まったそうだ。その反応の違いはどこに起因するのだろうか。向山さんはこう推測する。

 「そもそもハーバード・ビジネス・スクールの半分近くは女性なので、その女性たちにも当然パートナーはいる。“男だから”“女だから”というのはあまりなく、“バリキャリ”や“専業主婦”を肯定・否定するようなこともない。

 キャリアの専門性、お金に対する価値観、働く目的など、みんなそれぞれ異なる。結果として、キャリアを追及している共働き夫婦が多い印象はあるが、あくまでも自分と家族に合ったライフスタイルやタイミングに沿った選択をし、お互いにその選択を尊重していると感じる」

駐在していたカナダでは、様々なロールモデルの女性たちとの出会いがあった
駐在していたカナダでは、様々なロールモデルの女性たちとの出会いがあった