「やはり職場での仕組みづくりは重要だと思う。女性同士が相談、アドバイスを受けられるシステムや定期的なセミナーの開催など、組織化しないといけない。わざわざ上司を呼び出して相談するほどではないけれど、気になっている声を救い上げる仕組みね。

 今、管理職にたどりついた私たちは、女性が働きやすい環境を“残す”必要があると思うの。何かを残し、継続させるには、やはり仕組みとして組み込まないといけない。そして、女性も管理職として充分にやっていけると、メッセージを発信し続けなければならない」

 ガワハールさんのこの一言で、自分でも忘れかけていた前職での経験を思い出した。

仕事と家庭の両立に理解ある上司でもなぜ不安?

 前職のテレビ局ではニュース番組の担当をしていたが、所属していた部署では子育てをしながら働く女性が多かった。ロールモデルが多いにもかかわらず、将来仕事と家庭のバランスをうまくとれるかどうか、「自分には無理かもしれない」という不安があった。彼女たちに、どう両立をしているのか自分から積極的に知ろうとしなかったことが、ひとつの原因かもしれない。

 ただ、今思い返すと、管理職に女性が少なかったことが不安の大きな要因だと感じる。女性として30代後半、40代になったときにどういうキャリアを築いていくべきなのか、管理職に女性が少ないことで、自分の居場所が見えにくかったと思う。

 そのときの番組のトップは「夕方ニュースの視聴者の多くはお母さんだから」と、視聴者と同じ主婦や母親の目線を持つことの重要性を全体のミーティングで強調していた。その一言が組織のトップから出ただけで、「将来自分が家庭を持って、100%の時間を仕事に尽くせない働き方になっても、役立てるかもしれない」と、どこかほっとしたことを今でも覚えている。それでも、「理解がある上司でなかったらどうなるのか」「人が変わると環境も変わるのではないか」と不安が消えないのは、友人たちからもよく聞く話だ。これはまさに、ガワハールさんが訴える「仕組み」の必要性だ。

 女性が活躍できる社会。聞き飽きた言葉となりつつあるが、その実現のためには管理職や組織のトップが示す働き方、生き方、そしてサポートがいかに重要か、ガワハールさんとの会話を通して改めて気づかされた。

文/大倉瑤子

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