「次世代の女性たちに何を残せているのか。このことが、議論の中心だったわ」
 ガワハールさんは、開口一番そう言った。

リーダーシップを授業で学んでみたら……

 国連WFP(世界食糧計画)で20年以上のキャリアを持つガワハール・アティフさんは、WFPレバノン事務所長として、シリアの人道危機では食料供給のプログラム等を牽引してきた。絵に描いたような「国際機関で活躍する女性」だ。

 そんなガワハールさんが、ハーバード・ケネディ・スクールを訪れた目的は、「ウーマン&パワー」プログラムへの参加だ。ケネディ・スクールは修士号や博士号のプログラムの他、社会人向けのプログラムも多く開講しているため、キャンパスは20代から60代まで、多様な年代の「学生」で活気づいている。

 今年で14年目を迎えた「ウーマン&パワー」プログラムは、女性のリーダーシップに特化した1週間の短期講習だ。民間企業、NGO/NPO、政府、国際機関で管理職として活躍する11か国の55人の女性たちが参加した。

 リーダーシップを「学ぶ」ということは、日本で育った私には最初、正直ピンとこなかった。リーダーシップは教室で学ぶものではなく、経験で蓄積していくものだと思い込んでいたからだ。ハーバードでも「リーダーシップ」関連授業は非常に人気があり、実際に私も必修科目としてリーダーシップの授業を履修していくうちに、「学ぶ」ことの重要性に気づかされた。

 今回の「ウーマン&パワー」のプログラムでは、次世代の女性リーダーをどう育てるかに焦点が当てられたという。リーダーと言われるだけでも少し圧倒されてしまうのに、「ウーマン」「パワー」という言葉が並ぶと、一歩引いてしまうかもしれない。ただ、ガワハールさんと話すと、実はプログラムの中身は、共感できる内容ばかりだった。

 管理職の女性が、女性の部下にどういうガイダンスを与えられるか。女性の管理職を増やすことで、組織をどう強化できるか。また、女性の管理職の増加の利点をどう周知するか。どうすれば職場で男女の平等を実現できるか。どうすれば女性であることが仕事を諦めてしまう理由にならないのか。

 さらには、20~30代の女性たちが直面している課題に対して、どうサポートをするかが議論の中心だったという。

女性ならではの悩み共有する組織化が必要

 「私自身、これまで多様な国や人種の仲間と共に働いてきたけれど、女性の管理職が少ないのは、能力の問題ではないとはっきり言い切れる。組織の考え方や方法の問題。今のご時世、女性が働くべきかどうかを疑う人は少なくなった。職場も半分近くが女性になってきている。

 ただ、職場の管理職を見ると一気に女性の数が少なくなる。なのに、部下には多くの女性がいる。民間企業であろうが、政府であろうが、サービスや商品の受け手の半分は女性でしょう? 職場での女性の活躍の推進は組織にとって重要なこと。女性の管理職をどうすれば増やせるかは、もはや女性だけでの課題ではない

 今回のプログラムでは参加者の多くから、女性は決して能力では劣っていないが、自分を売り込むことに対して控えめであることが指摘されたという。さらに、男性が自分を売り込んでいると「やり手」に見えるのに対して、女性が同じ行動をすると「やりすぎ」に見えてしまうなど、女性ならではの悩みが共有された。

 ガワハールさんは、女性同士のコミュニティの構築、また活動の組織化が必要だと話す。