逆に男女の溝を深めていた?

 「当時はまず、信頼できる女性の同僚と話をして、女性同士の中で団結して問題解決をしようという考えが自分の中にあった。でも、今振り返ってみると、そうすることで、逆に私は男女の溝を深めていたかもしれない」

ハーバードでの出会いが、キアスティンの視点を変えた。ケネディスクールの同級生と学期末のパーティーにて。中央列左から著者、キアスティン
ハーバードでの出会いが、キアスティンの視点を変えた。ケネディスクールの同級生と学期末のパーティーにて。中央列左から著者、キアスティン

 女性ばかりで、問題意識を高めたことで、女性VS男性という構図を社内で作ってしまったのではないかと、彼女は話す。他の男性社員に「味方」を見つけることが、問題認識と解決に一番必要だったと今は考えている。

「女性の問題!」アレルギーを生まないために

 「男性だって必ずしも皆がすごく興味があって、サッカーの試合に行っているわけではない。プライベートな時間は家族と過ごしたいと思っている人もいたはず。でも、女性にとって不平等と声をあげた瞬間、一種のアレルギー反応みたいなものを生んでしまったかもしれない。『あ、また女性の問題か』と、特に男性が引いてしまうことで、状況を直視して共に考える環境すら失われてしまう。

 男性だから、女性だから、白人だから、黒人だから、年配だから、若手だからと、アイデンティティーで人を区切ると、各グループ単位での分裂を生む。一緒に問題を認識して、解決に向かうためには、一緒に考えることが不可欠だ」

 飲み会が「本音」を話し合える場として機能している組織が日本も多いので、キアスティンの悩みは共感できる点が多かった。

 私もよく友人と「タバコ部屋」や仕事後の飲み会のカルチャーについて話すことがあったが、今振り返るとこのような会話はいつも女性の友人としていた。男性の友人にどう思うか、聞いたことがなかった。彼女が言うように、社会によって作られたジェンダーや人種や年齢などの垣根を越えて対話を始めることが、問題解決への近道かもしれない。

文・写真/大倉瑶子