「さぁ始めよう」

 教授は授業の初めにこの一言を発してから、黙ってしまう。

 1時間15分の授業は、学生の言うまま、思うがままに進んでいく。

授業は学生主導。手探りでリーダーシップを学ぶ (C) PIXTA
授業は学生主導。手探りでリーダーシップを学ぶ (C) PIXTA

 これが、ハーバード・ケネディ・スクールのリーダーシップの授業だ。

超人気のリーダーシップの授業とは

 この看板授業は、経営大学院、教育大学院、医学大学院など、ハーバードの各大学院や学部、さらにはMITやタフツ大学の学生も履修するほどの人気だ。この授業が人生や人間関係の見方、考え方を変えたと話す卒業生も多く、私も受けずには卒業できないという思いで、履修を決めた。

 初回の授業は、今まで受けた授業の中で、最も緊張した空気が流れていた。何も話さない教授を前に、100人の学生たちがどうにか、秩序や形式を保とうと試行錯誤をする1時間15分だった。

 教授が「さぁ、始めよう」と言ってから数秒も経たないうちに、不思議と次から次へと学生が話を始めた。なぜ自分が授業を履修したのか話す人、リーダーシップとは何かと説明しようとする人、この授業から何を得たいか話す人…“自己紹介をしよう”と提案する学生が出たと思いきや、何となく話が流れてしまう。

 どのような目的や意味を持ちながら、周りの学生は発言をしているのか。秩序を求めている一方で、提案に付いていかないのはなぜなのか。初回の授業では多くの疑問が残った。