実は上司は部下に気を使ってる?

 今度は、上司の立場から考えてみましょう。現代は、部下への対応には細心の注意が必要な時代。平たく言えば、パワハラやセクハラにならないように、部下に気を使いながら接している上司もたくさんいます。

 もちろん、パワハラやセクハラは許されることではありません。部下に対して敬意をもって接することは、人として大切なことです。

 でも、だからこそ部下への接し方で悩んでいる人がいることも事実。以前、管理職の方を対象に研修を実施したところ、「世代が違えば価値観も違う部下と、どうコミュニケーションを取ればいいのか分からない。相手の許容範囲が分からない中で、教え方や育成法を専門的に学んでいない自分が、人材育成をやっていいのでしょうか?」と悩む声を聞きました。

 どこまで踏み込んで、どんな対応がベストなのかは、お互いが歩み寄って見つけるもの。上司と部下が協力し合って、自己開示していくことが必要なのです。

上司と部下の間でも「自己紹介」はしっかりと

 ボスマネジメントの観点から言うと、上司に聞かれるのを待つのではなく、部下のほうから自分の情報を上司に伝えることが大切です。特に、女性のプライベートは聞きづらいので、言ってもいいと思えることなら、自分から話題にしていくのがいいと思います。

 例えば、「毎週金曜は、定時後に料理教室に通っているんです」と話していれば、金曜に残業のムチャ振りをしてくることも少なくなくなるかもしれません。その他にも、結婚を考えている相手がいると知っていれば、上司も事前に「転勤は難しいだろうな」と判断することができます。

 プライベートな事情は、仕事やキャリアとも密接に関係しています。「プライベートと仕事は関係ない」「こんな話はしても意味がない」と、自らシャッターを下ろすのはもったいない。情報をどう生かすかは相手次第なので、秘密にしておく必要がないことは、自分から上司に伝えてみましょう

 「自己開示」と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、「上司にも自己紹介をきちんとする」ということです。自己紹介をしっかりとしておけば、お互いの遠慮や警戒心も薄れていきます。仕事でのミスコミュニケーションや、キャリアプランのズレなども、徐々に減ってくると思いますよ。

*今週の宿題*

上司に「感謝」や「ねぎらいの言葉」をかけてみましょう。「幸せのハードル」を少し下げて、「ありがとうございます」を習慣化してみて。

身近な人ほど抜けてしまいがちなことを、習慣化してみましょう (C)PIXTA
身近な人ほど抜けてしまいがちなことを、習慣化してみましょう (C)PIXTA

聞き手・文/青野梢 イラスト/北村みなみ 写真/PIXTA