「知っている言葉」から「使える言葉」へ

 例えば英会話で、単語は知っているけど、街で外国人に道を聞かれるとうまく話せないというように、言葉には、「知っている言葉」(=パッシブボキャブラリー)と「使える言葉」(=アクティブボキャブラリー)の2種類があります。ほめ言葉も同じで、「知っている」だけでは使えません。口から自然と出る、「使える言葉」を増やすには、実際に口に出して相手に伝える機会を増やすことが大切。周りにいる人をどんどんほめていけば、自然と使える言葉が増えてきます。

 また、少女漫画のような甘いセリフを言える(=使える)男性は、現実世界では少数派。でも、だからこそ甘いセリフを言える男性が、リアルな世界でもモテるのです。甘いセリフと同じく、知ってはいるけど使うには少し恥ずかしい……。そんなほめ言葉もサラリと口に出せるようになれば、今までとは一味違う人間関係を築けるようになるかもしれません。

 ただ、こうした日常の習慣を変えることは、案外大変で、勇気がいるものです。突然人をほめ始めると、周りからも「最近どうしたの? 少し変わったよね」と言われることもあるでしょう。自分が変化しようとするときに、他者の言葉や反応は、習慣化の妨げになることもあります。

 昔、建材商社で働いていた時に、常にズボンからシャツが出ているような、身だしなみに無頓着な後輩がいました。彼は一緒に働いていた最初の数年間、ずっとノーネクタイだったのですが、ある日突然、スーツにネクタイで会社に現れたのです。当然周りはザワつき、しばらくはみんなの注目の的。しかし彼は、周りの反応に臆することなく、淡々と毎日スーツにネクタイで出社しました。そして最終的には、スーツにネクタイ以外の彼は想像できないというほど、印象を変えることに成功したのです。

 人をほめる習慣も、慣れるまでは大きな負担になると思います。周りからの言葉や反応も、気になるかもしれません。でも、建材商社時代の後輩のように、淡々と実践していけば、いつかほめることが日常になる日が来るはずです。途中でくじけず、少しだけ踏ん張って、一緒に「ほめ」を習慣化していきましょう。

 実践しやすいように、「ほめ言葉一覧」を下記にまとめてみたので、ぜひ今日から活用してみてください。

今日から活用できる! 「ほめ言葉一覧」

「頭の回転が速いね」「安心して仕事を任せられるよ」
「教えるのが上手だね」「いつも気が利くね」
「気配りができてすてきだね」「機転が利くね」
「計画的で段取り上手だね」「決断力があるね」
「交渉力があるね」「〇〇さんと一緒のチームだと心強い」
「一緒に仕事ができてうれしいです」「仕事が速くて正確だね」
「視野が広くてリーダーとしての資質がある」「一緒にいると元気になるよ」
「器が大きいね」「芯が強くて尊敬する」
「〇〇さんのことは信頼してるよ」「誠実なところがいいよね」
「センスがあるね」「〇〇さんには助けられました」
「頼りになるね」「〇〇さんがいるとチームが盛り上がるよ」
「勉強になります」「またご一緒したいです」
「目の付け所がいいよね」「この職場に〇〇さんがいてくれてよかった」
「前から思ってたけど、やっぱりすごいよね」「勉強家だよね。見習いたい」
「〇〇さんがいると場が和む」「後輩の面倒見がいいよね」
「行動力があるね」「頑張ってるところを見てると、私まで励まされる」
「君が部下でよかった」「〇〇さんが上司で私は恵まれています」

*今週の宿題*

「ほめ言葉一覧」の中から、知ってはいるけど使っていない言葉を探して、実際に使ってみましょう。
相手によっては「根拠」をプラスしながら、響く言葉を見つけてみて。

「知っている言葉」を「使える言葉」にしていきましょう (C)PIXTA
「知っている言葉」を「使える言葉」にしていきましょう (C)PIXTA

聞き手・文/青野梢 イラスト/北村みなみ 写真/PIXTA