涙ぐましい努力、やりがいを感じた「あの瞬間」

 多忙な社長や役員につきっきりで、神経をすり減らすこともある秘書職。時には、難しいリクエストに柔軟に対応したり、突然のトラブルの収拾に努めたり……マニュアル通りに進まない仕事で苦労することが多々あります。でもそれ以上に、苦労した分だけ、やりがいとして返ってくるという声も多く集まりました。「秘書をやっていてよかったなあ」とほろりとさせられる場面などについても聞いてみました。

取引先の方が「○○さんのような気遣いのできる秘書がついていて、○○社長は羨ましいよ」と言ってくださったとき。(20代女性、秘書歴3年、不動産、社長を担当)

未経験で秘書になり、未熟なところは多々ありますが、社長から「秘書の仕事、頑張ってますね」とねぎらいの言葉をもらったときにありがたく思います。(20代女性、秘書歴2年、情報通信・IT、社長を担当)

親会社の会長が来日したとき、手書きのお礼の手紙を受け取りました。私の名前など覚えていないと思っていましたが、きちんと覚えてくださっていて感動しました。さらに、次の休暇時には家族で日本に来てくださり、20日も滞在、喜んでお手伝いさせていただきました。今の私を支える貴重な経験でした。(40代女性、秘書歴10年、放送・広告・出版・マスコミ、会長・社長・取締役・グループを担当)

海外のゲストを迎えるためのもろもろのアレンジをしました。ゲストがお帰りの際に「見事に手配してくれてありがとう」「パーフェクトだったよ」と言ってくださり、疲れが消え去りました。以後、そのゲストがこっそり私だけにお土産を持ってきてくださることもあり、うれしく感じています。(40代女性、秘書歴14年、製造、社長を担当)

組織のトップである上司に「頼りにしている」「君がいてくれないと予定が分からないのでいつも助かっている」などのお言葉をいただいた際にはやっていてよかったと思います。上司は、どんなに疲れていても、お帰りの際に必ず笑顔で「今日もありがとう。お疲れさま」と逆に言ってくれます。そんな器の大きい人が実在するのだと身をもって実感していますし、その感動を与えてくれた上司とこの仕事に感謝しかありません。(30代女性、秘書歴7年、教育・研究、理事長を担当)

クライアントの上層部の方との会食に同席することになり、その方の趣味などの情報を別ルートで仕入れました。途中お話が途切れた際にその情報を話題に出し、その後の盛り上がりに感謝されました。頑張ったかいがありました。(40代女性、秘書歴7年、コンサルタント・会計・法律関係、社長・常務取締役を担当)

クライアント先の社長から、「私の秘書になってほしい」と、上司の社長の前でお声掛けをいただいたことです。社長の顔も立ち、私自身も仕事ぶりを認めていただき、とても感動しました。(40代女性、秘書歴20年以上、コンサルタント・会計・法律関係、社長を担当)

「秘書冥利に尽きる」という言葉すら考えてはいけない。感謝されることもなく、空気や水のように仕事をすることが目標ですが、やはり「あなたがいないと仕事ができない」と言われたときは感激しました。(40代女性、秘書歴20年以上、情報通信・IT、本部長クラス・事業部長を担当)

上司がうっかり忘れそうになってしまったことを、あらかじめ準備しておいたりサポートできたりしたとき、本当に感謝され、こちらもうれしく思います。会食の手配などで、お食事がおいしかったとか、お客様も喜んでいらしたとか、いい報告を聞くと、さらにおいしいお店を見つけようと思います。秘書をしていると、上司と部下の方との橋渡しすることがあり、上司からも部下の方からも頼りにされるので、本当にやりがいのある職種だと思います。(40代女性、秘書歴17年、情報通信・IT、取締役を担当)

100人以上の社内スタッフが自分の名前と顔を覚えてくれ、担当上司との架け橋として活用してくれること。いわゆる上司と部下という関係では言いにくいこと、誘いにくいことなどを相談され、私を通じて上司とスタッフをつなぐ役割を担えるのはうれしいです。上司にも、そのような役割を期待されていると思います。(40代女性、秘書歴3年、情報通信・IT、常務取締役を担当)

トラブルが起きた際、役員がその担当に「○○さんに相談して処理して!」と私を指名し、対応策を相談する指示をしてくださったこと。非常時に私の意見を聞いてくださったのがうれしかったです。(40代女性、秘書歴20年以上、建設、常務取締役・本部長クラスを担当)

前任の秘書が担当していなかった、新しい分野まで関わらせてもらえることにやりがいを感じます。私が秘書になってから仕事がスムーズに進むとねぎらいの言葉をいただけました。(40代女性、秘書歴3年、製造、社長を担当)

役員の挨拶原稿についてです。都度都度、役員の挨拶原稿を用意して手渡しますが、たいていは全く違った話をされ、空振りが続きます。ある時、初めて原稿の内容が採用されて大勢の前でお話しをされたあの瞬間は、忘れられません。(男性、秘書歴4年、製造、取締役を担当)

ずっとついていた上司が社長になったときは感慨深かったです。(40代女性、秘書歴20年以上、放送・広告・出版・マスコミ、社長を担当)

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 アンケート結果を眺めると、憧れや自分の意思で秘書になった人も、社命や成り行きで秘書になった人も、秘書職という仕事の奥深さのとりこになっている様子がうかがえました。それだけ魅力的な職種なのかもしれません。この先も、上司のため、会社のために今日も全力奔走する秘書職の皆さんに幸あれ!

文/日経ウーマンオンライン編集部 イメージ写真/PIXTA