多忙を極める役員や上司が本業に集中できるよう、きめ細やかなサポートを行う総務の専門家・秘書。そのスキルには、どんな職種の人にも応用できるお仕事のヒントが満載です。今回はその中でも、さりげない心掛けで差がつく「電話とメールの基本マナー」について、自身も秘書経験があり、現在はマナー講師や秘書検定面接官も務めるプロフェッショナル・杉本直鴻さんに教えていただきました。

電話口での第一声があなたの印象を決める!

 SNSなどの連絡手段が急速に普及しているとはいえ、多くのビジネスシーンにおいて、なくてはならない存在として重宝される電話とメール。使用頻度が高いだけに、なんとなく惰性で使ううち、品格に欠ける印象になっている……ということはありませんか。

 まず、電話で話す際の印象アップのポイントについて聞きました。ビジネスシーンで電話をするときに最も意識すべきことは何でしょうか。

 「重視してほしいのは、電話口での第一声。電話は相手の顔が見えない状態だからこそ、声の印象が強く残ります。まずは第一声のトーンに勝負を懸ける気持ちで臨んでみてください」と杉本さん。

 対面していれば、声の印象が多少悪くても表情や態度でカバーすることも可能です。しかし電話では、声の印象がすべて。実は対面よりも、印象アップが難しいといわれているのです。そのため、トーンが重要だと杉本さんは説明します。

 では具体的に、どのような配慮をすれば第一声のトーンを好印象にすることができるのでしょうか。ポイントは2つあると杉本さんは説明します。

 1つ目は姿勢です。「姿勢を整えて喉を開いてください。デスクワークをしていると前傾姿勢になりやすく、喉が詰まった状態のまま声を出している人が多いんです。それでは、声がこもって低く沈んだ声になってしまう。だからまずは、背筋を伸ばすことが大切です」(杉本さん)

背筋を伸ばして、喉を開いて発声することが大切 (C)PIXTA
背筋を伸ばして、喉を開いて発声することが大切 (C)PIXTA

 低い声というのはどうしても、不機嫌さや暗さを感じさせてしまうもの。顔が見えない電話ではなおさら、良くない印象を与えてしまいます。

 声が低いなと感じたら、意識的に高音を出してみましょう。「普段の話し言葉が『ドレミファソ』の『ド』の音だとしたら、『ソ』の音を出す気持ちで第一声を発するくらいがちょうどいいんですよ」と杉本さんは説明します。

 そして2つ目のポイントは、あらかじめ笑顔をつくること。声の印象と表情がリンクしているためだと杉本さんは言います。

 「試しに、しかめっ面をしたまま感じの良い声を出してみてください。なかなか難しいものです。つまり、形式的なものであれ笑顔をつくって発声すれば、好印象な声のトーンを実現できます。表情の切り替えを意識しにくい人には、電話をとる前・かける前に鏡を見て笑顔をつくる方法がおすすめですよ」(杉本さん)

 かかってきた電話をとるときは、「少しでも早く出なければ」と焦りがち。しかし、ほんの1秒だけ心の準備をするひとときを設けて、姿勢と表情を整えてみましょう。そうして受話器を取るのです。気持ちの切り替えをすることで第一声が変わり、電話口での印象がぐっと良くなるのだと杉本さんは言います。電話をかけるときも同様です。