大豆や乳製品と乳がんの関係は?

 中村先生によると「食の欧米化も乳がんの発症率を増加させている原因の一つ」だという。農林水産省の「食品需給表」を見ると、2004年には米から摂取するカロリーは1日の食事の4分の1以下となり、代わりに畜産物油脂類からの摂取量が4倍以上となっており、摂取カロリーも1960年と比較して300kcalも増えている。酒のいいアテとなるのは、油っこいハイカロリーなものばかり。飲酒量はもちろんのこと、一緒に食べるおつまみにも気を使わねばならない。

 おつまみといえば、大豆のイソフラボンが乳がんの再発リスクを低くするとか、逆にチーズをはじめとする乳製品は乳がんになりやすくするという噂もある。これが本当であればおつまみも選びやすくなりそうだが、その実は果たして?

 「大豆は予防の可能性があるとの報告もありますから、摂取して悪いことはありませんが、より多く摂ることでリスクを下げるといった効果は期待しない方がいいでしょう。イソフラボンが乳がんのリスク減少に良いと聞いてサプリメントで補おうとする方がいますが、医師の立場からはおすすめしません。また、乳製品においてはリスク要因になるかどうかは賛否両論あり、証拠不十分となっています」(中村教授)。

 なるほど、何か食べ物を摂取して乳がんのリスクを避けようという方法は捨てた方がよさそうだ。

運動も乳がん罹患率を減少させる

 中村先生は、乳がんリスクを避けるもう一つの方法として「運動」を勧める。

 「痩せるということにつながるかもしれませんが、運動は乳がん罹患率を減少させます」(中村教授)。閉経前後に関係なく、運動は体重維持、肥満防止につながる。生活習慣病を防ぐ効果もあるのだから、「やっぱり運動はしなければ」との思いを新たにした。

 アルコールを過度に気にする必要はないとはいえ、リスクが高まるのは確実。そして「肥満防止」「適度な運動をする」のがリスクを減らす重要ポイント。これは、「飲酒量を控え」「食べ過ぎず」「運動も心がける」という、世間でよく言われるメタボなどの健康対策そのものではないか! 乳がんに打ち勝つためにも、日々の健康を維持するためにも、今日からでも実践してみてはいかがだろうか?

この人に聞きました
中村清吾
中村清吾(なかむら せいご)さん
昭和大学医学部乳腺外科教授、昭和大学病院ブレストセンター長。同臨床遺伝医療センター長兼務。日本乳癌学会理事長
1982年千葉大学医学部卒業。同年より聖路加国際病院外科にて研修。1997年M.D.アンダーソンがんセンターほかにて研修。2005年6月聖路加国際病院ブレストセンター長、乳腺外科部長に就任、2010年6月より現職。日本外科学会理事、日本乳癌学会理事長。

文/葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト

日経Gooday「お酒は控えた方がいいのか? 知られざる乳がんとアルコールの関係」を転載