この連載では、毎週火曜日に健康・医療専門サイト「日経Gooday」編集部の取材から、元気になる最新のカラダの話をお届けします。

 減量のために食事のカロリーを気にしている人は多いだろう。「低カロリー」「高カロリー」というのもなじみのある表現だ。今回は、この「エネルギー、カロリー」について取り上げたい。「〇歳女性は1日△kcalまで」といった「性別・年齢別のエネルギー摂取目標」を目安にするのはもう古いってご存じでした?

消費と摂取がイコールなら太らない?

私たちはカロリーとどう付き合っていけばいいのか?(©Andrey Cherkasov 123-rf)
私たちはカロリーとどう付き合っていけばいいのか?(©Andrey Cherkasov 123-rf)

 カロリーとは食品の持つ熱量、つまりエネルギーを示す単位だ。

 「1カロリーは1gの14.5℃の水を15.5℃に、つまり、温度を1℃上げるために必要なエネルギーと定義されています」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)。

 エネルギーを持つ栄養素は、たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質)の3大栄養素だ。これらが呼吸によって肺から取り込まれた酸素と反応して分解され、エネルギーが生じる。

 「私たちが呼吸をしたり、心臓を動かしたり、血液を循環させたりするのにはエネルギーが必要です。体温を一定に保つのにも、神経の伝達を正常に行うのにもエネルギーが使われています。体内のあらゆる現象は化学反応によって成り立っていますが、それぞれの化学反応にエネルギーが利用されているのです」(上西氏)。

 人間が生きていくのに最低限必要な機能を維持するための最小のエネルギー代謝を基礎代謝という。また、歩行、仕事、家事などの身体活動や、食べ物の消化・吸収にもエネルギーが使われる。

 これらの消費エネルギーと同量のエネルギーを食事で摂取していれば、体重は変わらない。一方、消費量が摂取量よりも少なければ太り、消費量が摂取量よりも多ければやせる。

消費量=摂取量 維持
消費量<摂取量 太る
消費量>摂取量 やせる

 理論上はごく簡単なことだが、実際には、なかなか減量できずに悩んでいる人が多いのが現状だ。

今の食事が適正かどうかは体重(BMI)を参考にしよう

 「基礎代謝には個人差があり、環境や年齢、筋肉量によっても変動します。また、エネルギー消費量は外気の温度や食物摂取状況、あるいは仕事や運動による身体活動状況など、さまざまな環境条件、生活活動によって変動します」(上西氏)。

 つまり、何をどれだけ食べればいいかは個人差や変動が大きく、一律に必要量を示すことが難しいということだ。そのため、厚生労働省が5年ごとに発表する『日本人の食事摂取基準』の2015年版からは、「40代の男性の1日に必要なエネルギー量は2650kcal、40代女性は2000kcal」といった推定エネルギー必要量は参考として掲載されるだけになった。

 『日本人の食事摂取基準』の2010年版までは、下記の表のように、年齢、性別、身体活動レベルから必要なエネルギー量が示されていた。

推定エネルギー必要量(kcal)
推定エネルギー必要量(kcal)
『日本人の食事摂取基準2010年版』より

 しかし、「たとえば、ひとくちに40代男性といっても、体格はさまざまです。また、身体活動レベルを『低い』『普通』『高い』に分けて数値化する方法はエビデンスが乏しく、十分に信頼できるものとはいえませんでした。そこで着目したのが体重です」(上西氏)。