苦しいときほど「笑顔」を意識すべし

 このシリーズでは、全5回にわたり、具体的なメンタルトレーニング法について紹介していく。そこで今回は手始めに、トレーニングや本番で心がけたいポイントである「笑顔」について解説しよう。

 「結果を出したければ、全身でプレッシャーを感じながら真剣な表情で頑張るべき」。こう思っている人は多いかもしれない。仕事や試合などの場においても、鬼気迫る形相で取り組む人ほど、やる気が評価される傾向にあるのも事実だろう。

 しかし、「メンタル強化を目指すうえでこの頑張り方は逆効果となる」と高妻さんは断言する。プレッシャーによって緊張した心身のままでは、発揮できる力が制限されてしまう。逆に、笑顔でリラックスしているほうが、冷静さを保って立ち回ることができ体もスムーズに動くからだ。

 「私がアメリカで出会ったプロ選手の多くは、苦しいときほど笑顔になって気持ちを落ち着けていました。そうすれば体の力みが抜けて呼吸も安定してくる。真面目な顔で心身に緊張を感じているときよりも格段に、パフォーマンスが向上するのです」(高妻さん)。

 その笑顔の力を証明した高校野球のエピソードがある。