深煎りにはクロロゲン酸はほとんど含まれていない
その変化について、第1回でご登場いただいた東京薬科大学名誉教授の岡希太郎さんが説明してくれた。
「コーヒーに含まれるポリフェノールであるクロロゲン酸は生豆に多く含まれています。焙煎して熱を加えることによって、その含有量は低くなります。私が行った実験では、焙煎を開始して最初のパチパチというハゼ音が終わった浅煎りの段階で、クロロゲン酸の含有量は半分程度になりました。クロロゲン酸を摂取するなら浅煎りで飲むのがおすすめです。フレンチロースト(深煎りの焙煎)やエスプレッソなどにはほとんどクロロゲン酸は含まれていません」。
一方、焙煎することによって増える成分もあるという。
「生豆に含まれるトリゴネリンという成分は、焙煎する熱によって分解され、抗血栓作用を持つニコチン酸や、副交感神経を刺激してリラックス作用をもたらすNMP(N-メチルピリジニウムイオン)といった物質に変化します。特にNMPは焙煎するほどに含有量が増え、シティロースト(第2ハゼ音の始まりで浅めの深煎り)なら1杯あたり10mg程度。数杯飲めば、薬理学的に意味のある量に達します」。
このような結果を踏まえ、岡さんは「浅煎りと深煎り、いずれにもいい成分が含まれています。ですから、過度に意識する必要はありません。可能なら1日の中で深煎りと浅煎りの両方を飲むと理想的ですね」と話す。
自宅で飲むときには、両方の煎り方の豆を用意して、組み合わせて飲むのも一つの方法だ。なお、深煎りと浅煎りの成分を同時に摂取できるように、両方をブレンドしたコーヒー豆も販売されている(愛知県豊橋市の会社ワルツが販売している「カラダ想いブレンド<爽><快>」)。