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日経グッデイ・最新カラダのはなし

「孤立」はたばこと同じくらい健康に悪影響 対策は?

2017年3月23日

東京大学大学院医学系研究科 近藤尚己准教授に聞く「ストレス社会への処方箋」

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この連載では、毎週火曜日に健康・医療専門サイト「日経Gooday」編集部の取材から、元気になる最新のカラダの話をお届けします。

 ある日、やせこけた50代の男性が病院に運ばれてきた。診察をすると弁膜症という病にかかっていることが分かり、心臓の手術をして一命を取りとめ退院した。しかしその後、彼は通院しなければならないにも関わらず、病院に足を運ばなくなってしまった。しばらく経ってから、担当した医師が地方紙の訃報欄で彼の名前を見つけ、がっくりと肩を落としたという。

 男性は、なぜ通院しなくなったのか。彼は諸般の事情で、妻や親族の多くからは縁を切られていたという。経済的な理由や健康意識の低さなど、さまざまな要因が考えられる。「自業自得じゃないか」と切り捨ててしまいそうだが、果たしてそうだろうか。「そうさせてしまった社会」にも原因があるとは考えられないだろうか。

 東京大学大学院医学系研究科准教授の近藤尚己氏が専門とする「社会疫学」は、健康において「本人にはどうしようもない、社会的な要因」を研究する学問だ。病気やストレスは、どのようにして生じるのか。生きづらい社会の中で、健康に生活するためのヒントを聞いた。

人との繋がりがない人は、ある人よりも寿命が短い

――近藤さんのご専門である「社会疫学」とは、どういった学問なのでしょうか。

近藤:社会疫学とは、病気のリスクの中にある社会的な要因を明らかにする学問です。

 例えば、たばこをたくさん吸うと肺がんになりやすくなることは皆さんご存じかと思いますが、これを検証するためには、たばこを吸う人、吸わない人を大勢集めて、追跡調査をしなければなりません。このような集団のデータを比べることで、病気の原因や成り立ちを明らかにすることができます。

 病気のリスクを高める典型的な社会要因の1つが「貧困」です。統計から見ると、所得の低い人、教育水準の低い人ほど寿命が短く、病気になりやすいというデータは、世界中で得られています。そういったことも明らかにしていきます。

 今回のテーマは「男のストレス事情」ということですから、男性が仕事で抱えやすいストレスについてもお話ししたいと思います。仕事のストレスを抱えやすい職場とそうでない職場を分析し、どこに原因があるのか、健康にはどんな影響が表れるのかを研究することにも、社会疫学の方法論が役立つのです。

病気のリスクの中にある“社会的な要因”を明らかにする学問が「社会疫学」です

――冒頭で触れた、心臓の手術をしたのに通院しなくなってしまった男性のエピソードは、近藤さんが研修医時代に実際に目の当たりにしたことだそうですね。

近藤:そうです。 彼の事例だけでなく、せっかく病気を見つけ、治療を始めても、数カ月経つと病院に来なくなってしまい、病気を十分に治せない人を大勢診ました。病院で治療するだけでは、健康になれない。患者さんの生活を整えなければならないと感じました。

――なぜ、通院しなくなってしまう患者さんがいるのでしょうか。経済的な理由や健康に対する意識の低さなどもあるかもしれませんが、将来に対する期待感が低いとか、希望が持てないことも影響しそうです。「どうせ長生きしてもしょうがないし」というような。そういったところから変えていくようなアプローチをすることもあるのでしょうか?

近藤:ありますね。一つは政策の話になりますが、誰でも希望が持てるようにする仕組みとして、社会保障があります。「失敗したら次がないんじゃないか」と思うと、なかなか皆さんチャレンジできないですよね。チャレンジできない人生は面白くありません。

 そこで、例えば病気になっても治療費を何割か負担してもらえるとか、失業しても一定期間の収入が保障されるといった制度を、社会に導入するのです。そういった制度が充実している社会ほど、チャレンジしやすくなり、将来への希望を持ちやすくなると思います。

 もう一つは、自分の「社会の中での役割」を意識できるようにすること。これができないと、「自分は世の中で役に立たない人間だ」と思ってしまって、生きていてもしょうがないと感じてしまうことに繋がりますよね。

 自分一人だけのために生きられる人というのは、世の中にはいません。人間は社会的な動物ですから、人に認められるとか、人のために生きるとか、そういったところが、奥底では健康を保つモチベーションになっていたりすると思います。実際、社会疫学の研究では、繋がりのない人は、そうでない人に比べて寿命が短いという論文がたくさんあります。

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