そのほか、笑いには血糖値の上昇を防ぐという嬉しい効果もある。

 糖尿病患者19名を対象とした調査では、一定の食事をとった後に難しい講義を受けた場合と、漫才を見て笑った場合の血糖値を比較。講義後には平均して123㎎/dLの上昇が確認できたが、漫才後については平均77㎎/dLの上昇にとどまった。これは、笑いによって細胞の活性を促す遺伝子にスイッチが入り、血糖値の上昇が抑えられたためではないかと考えられている(※6)。

 こうした笑いの効果は、すでに医療の現場でも応用されている。永井さんが例として教えてくれたのは、米国の映画『パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー』の主人公のモデルとなった、ハンター・キャンベル・アダムス医師の活動である。

 彼は、笑いを病院に届けるピエロ「ホスピタルクラウン」として、入院生活を送る子供たちに向けてパフォーマンスを行う。ユーモラスなピエロがもたらす笑いの力により、闘病中のストレスを緩和するとともに、免疫力を高めるのがその狙いだ。

作り笑いでも、愛想笑いでも、効果アリ

 映画の中で医師は「表情が感情を生み出すことがあります。つまり、作り笑いでも愛想笑いでも情報は脳の中枢を刺激して、楽しいという感情がわいてくるのです」と説明している。

 つまり「心の底から笑おう」と意気込まなくても良いということであり、興味深いことだ。

 「ためしに、口角をギュッと引き上げてみてくだい。笑顔が形づくられれば、自然と楽しい感情が湧いてきて次第に本物の笑いになっていきます。すると、心身にあらゆる健康効果がもたらされ、生活習慣病をはじめとするあらゆる病にアプローチしてくれるんです」(永井さん)。

 まさに「笑う門には福来る」というわけだ。健康な心身で長生きすることを願うなら、まずはとにかく口角を上げてみよう。


※6 血糖値
1.村上和雄 「笑う!遺伝子:笑って健康遺伝子スイッチON」(一二三書房)2004
2. Hayashi K,et al ; Laghter lowered the increase in postprandial blood glucose, Diabetes Care, 26, 1651-1652, 2003

この人に聞きました
永井博弌
永井博弌さん
岐阜薬科大学名誉教授、岐阜保健短期大学教授兼学長
免疫薬理学や免疫疾患(アレルギー・自己免疫)などをテーマに研究を行う。著書に『もうアレルギーに苦しまない~発症のしくみ・予防の治療法』(日本薬学会)など。

文/西門和美

日経Gooday「作り笑いでもOK! 笑いの力で免疫力アップ」を転載

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