「笑う門には福来る」とは、よく知られる故事ですが、近年これを裏づけるような研究結果が続々と発表されているのをご存知ですか? 笑いには、疫力を高めたり自律神経を活性化する効果があるということが実証され始めています。笑いの効能について、岐阜薬科大学名誉教授である永井博弌さんに伺いました。

笑っているだけで免疫力が高まり健康体に!?

「笑う門には福来る」、これは健康科学においても当てはまるようで…。
「笑う門には福来る」、これは健康科学においても当てはまるようで…。

 「笑わない人は損なんですよ! 今日は笑いましょう。ハッハッハー」と、自ら軽やかに笑ってみせるのは永井博弌さん。

 笑いは単に、楽しい感情をアウトプットする行為にとどまるものではない。永井さんによると、私たちの心身において笑いが作用する対象は大きく3つ。

 まず1つ目には、自律神経。笑いには自律神経を活性化する力があり、心身における活動モードと休息モードの切り替えをスムーズにさせる。

 さらに2つ目は、脳。脳内麻薬と呼ばれるドーパミンやエンドルフィンの分泌を促すほか、脳内の血流量を増加させる働きもあるという。

 そして3つ目が、免疫力。笑いには、免疫細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる作用がある。これは、笑いによって分泌されるエンドルフィンの働きだと考えられている。

 NK細胞は体内をパトロールして、ウイルス感染や細胞の悪性化が起こっていないかを探るほか、異常が発生した際には最前線で防衛部隊として働くという重要な役割を担う。「ただし、非常にナイーブな性質をしており、ストレスや加齢などによるパワーダウンは避けられない。そこで、弱体化したNK細胞を活性化させ、十分な免疫力を発揮するために有効なのが、笑いの力なのです」(永井さん)。

 こうした効能を証明する調査結果は、すでに多数発表されている。

 たとえば、20~62歳のがん患者を含む男女19名に約3時間にわたって漫才や喜劇を鑑賞し、大いに笑う体験をしてもらう。その前後のNK細胞活性率を調べたところ、もともとの活性率が低かった人は上昇し、高すぎた人に関しては低下するという結果が見られた。つまり、笑いの後には総じて、NK細胞の活性率が正常に近づくような調整作用が起こったというわけだ(※1)。


※1 NK活性の上昇
1.伊丹仁朗:笑いの免疫能、心身医学、34、566-571、1994
2.伊丹仁朗:「笑いの健康学――笑いが免疫力を高める」(三省堂)1999
3.昇 幹夫(元気で長生き研究所・所長):「笑いの免疫機能・ストレスへの作用について」Aging & Health, 1, 16-19, 2014