「私がいま大事にしたいのは仕事ではなく子どもとの時間です。子どもたちが成長していく姿をちゃんと見届けたい。だから、しっかりした経済力が彼の魅力の一つであることは確かです。楽しそうに働いているところもいいですね。一緒にいて面白いんです」

 20代30代を通じて「イケメンの遊び人」である前夫のことを愛し続けていた佳恵さんですが、ようやく吹っ切れて新たな恋愛をしているようです。ただし、ここに至るには様々な経験が必要でした。佳恵さん、まずは上京までのストーリーを聞かせてください。

 「高校時代から雑誌のデザインに興味があったのですが、先生から『そんなのは無理』と言われたので和裁の学校に行くことにしました。早く自立するために手に職をつけたい、という気持ちが強かったんですね」

 しかし、その学校は「3DKの5人部屋。無断外泊はもちろんダメ。電車やバスに乗ってもいけない。食事はお粗末」という理不尽に厳しい全寮制でした。佳恵さんはわずか1カ月間で中退。福岡市内で銀行員をしていた姉の部屋に居候し、様々なアルバイトをする生活が始まります。心配した父親は公務員を受験するように勧めましたが、佳恵さんの気持ちは別のところに向かっていました。

 「街中でやっていたアートイベントを見たとき、『私がやりたいのはやっぱりこれだ!』と確信したんです。デザインの力を感じました。当時、付き合っていた予備校生に話したら、『だったらデザインが学べる短大に行くべき。合格通知を見せたら、親は絶対に応援してくれる』とアドバイスされたんです」

 しかし、現実はそんなに甘くありません。受験先を勝手に大幅変更した佳恵さんに父親は怒り、「お前の趣味のためにオレは金を出せん」と宣言。佳恵さんは姉からお金を借りた上で、アルバイトで学費を賄わざるを得ませんでした。

 「他の学生のように遊ぶことができないどころか、勉強とバイトの両立が苦しくて倒れてしまったこともあります。もう学校を辞めたい、と思ったときには2年生の夏になっていました。あと半年がんばれば卒業できる、いま辞めたら1年半の苦労が無駄になってしまう、と自分に言い聞かせて耐えました」

 卒業間近になって就職先を模索していた頃、先に東京に出ていた先輩が大手のデザイン事務所の採用情報を教えてくれました。短大に進学していなかったら得られなかった情報ですよね。佳恵さんはまさに自力で東京での仕事を手にしたのでした。「自分のデザインでお金をもらって暮らす。いつか本や雑誌を丸ごと一冊デザインする」という明確な目標を掲げて。

 明日は、上京してからの佳恵さんの生活と恋模様をお話します。「私は男をダメにする」と告白する佳恵さん。いったいどんな恋愛をしてきたのでしょうか……。