こんにちは。ライターの大宮です。この数年ほど、企業の人手不足が深刻化していますよね。優秀な若手もしくは即戦力のベテランを安く使い捨てられる時代は終わったのです。それでも無理な経営を続けていると、今年1月に軽井沢で起きたバス転落事故のような惨事が発生するでしょう。

 消費者の側としても「安すぎる商品は危険」という意識を持って自己防衛するべきだと思います。「良いものをそれなりの値段で買う」ことは長期的に見れば自分のためにも社会のためにいいこと、ですよね。

 僕が就職活動をした90年代後半は状況が違いました。人気企業の採用数は極端に絞られていて、大学をあえて卒業せずに「就職浪人」をする人も少なくなかったのです。学生の側にも問題はありました。「好きを仕事にする」「オシャレな会社に入りたい」といった気持ちが強すぎたことです。地味だけど優良かつ社会的意義のある会社や職業には見向きもしませんでした。若いから仕方ないんですけどね。

 そんな状況にビジネスチャンスを見出したのがいわゆるブラック企業です。野心や自意識はあるけれどいまいち先を見通せない人たちを、「夢をかなえられる」「完全実力主義」といった宣伝文句で集めてひどい労働条件で働かせました。実際に勝ち残れる人などほんの一握りなのに。

 人件費も含めたコストを極限まで安く抑えて少しでも多くの利益を生み出したい。倫理よりも利益が大事。稼ぐ者が勝ち――。このような考え方は今後通用しなくなっていくでしょう。

 ちょっと深刻な書き出しになってしまいました。本連載に登場するアラフォーの女性たちは僕と同じく「ロストジェネレーション」と言われた世代なので、新卒で就職をするときに男性以上に大変な思いをした人が少なくないのです。そのときの経験が恋愛にも影響していると僕は思います。

 今回お話を伺う手塚宏美さん(仮名、39歳)は、都内の私立大学在学中からマスコミ志望でした。しかし、ようやく入ることができたのは「10年以上働いても年収300万円に届かない」地方誌の編集部です。

 「その収入では地方でも家族を養うことは難しいので、男性はすぐに辞めていきます。残るのは、兼業農家のおじさんたちと私たち女性だけです」