「男で中年女を使ってのしあがる人が…」

深澤:私がどうして古市憲寿を男オンチと思ったかにさかのぼると、私たちはあなたが最初の本を出す前に、私たちの師匠である上野千鶴子さんの会で出会ったんだよね。

古市:2010年だから、ちょうど5年前だ。

深澤:あなたがすーっとやってきて、「深澤さんですよね、草食男子っていいネーミングですよね。僕もはじめての本を出すんです、こういう内容なのでタイトルを考えて下さいよ」っていきなり言われて。

古市:言いましたね。

深澤:「なんだこいつ?」って思ったけど、私は上野さんには本当にお世話になっているから、「これがよく言われる『上の人にお世話になったものを若い人に返す』ってやつか」と思って、「うんいいよ」と。

 そしたらさっそく翌日、「考えましたか?」というメールが来て、一生懸命考えて3案くらい出したら「悪くはないけど、イマイチですね。もう一声」みたい返事が来て(笑)

深澤:それなりにベテラン編集者ですよ、私も(笑)。でもまあ上野さんへの恩を返すつもりで、もう3案くらい出したのに、今度も「ああ、こんな案ですか」みたいな返事が来て、プロとしてくやしいからさらにもう3案くらい出して、そこからパタッと連絡が来なくなったわけですよ。

古市:そんなひどいことしましたっけ?

深澤:「あの青年から連絡が来ないけど、出版はなくなったのかな」と思っていたら新聞広告で本が出てるのを知り、もちろん私のタイトル案は採用されていなかったわけです(笑)

古市:ふふ。『希望難民ご一行様』というタイトルになりました。

深澤:それで、私には本を送ってくれないのに、私の会社でマネジメントしている文芸評論家の斎藤美奈子さんに、「古市といいます、あなたのファンです。ぜひ書評してください」って直筆の手紙を入れて送ってきた。私がマネジメントしてるって知らないから(笑)

古市:おかしいなあ、深澤さんにも献本しなかったかなー。

深澤:してないよ!(笑)

 ただ、そのときにしみじみと思ったのは、古市くんが本を出すきっかけは上野千鶴子さんだし、東大社会学の本田由紀さんに推薦文を書いてもらって、さらに私にタイトルを考えさせ、斎藤美奈子さんに書評を頼み、と使う相手がみんな女性で。

 それで「男で中年女を使ってのしあがる人が、やっと出てきた」って感動したんです。

日経ウーマンオンラインで人気を博した連載「女オンチ人生」が1冊の本になります!

 「女オンチ」とは、著者本人が自分のために作った言葉。生まれながらにして「女らしさ」というものが分からず、美魔女信仰が甚だしい現代の世の 女性たちとはズレた感覚の自分を、楽しく綴っている。化粧もしないで結婚式に出る、占いが嫌い、更年期障害や老眼を悲観するどころか楽しむ…かといって、女を武器にすることを否定をするわけでもなく…。

 ここに挙げられていく「女オンチ」な出来事のうち、ひとつは誰にでも当てはまるところはあるはず。自分のことを「女性としてだめだな」とちょっと悩んでいるあなたも、この本を読めば「こんな自分も悪くない」と、励まされること間違いなし!?

 新たに、社会学者の古市憲寿氏との「女オンチ×男オンチ」のスペシャル対談を掲載!「人間オンチ」な2人の軽妙なやり取りにも癒される!?『女オンチ。-女なのに女の掟がわからない』(670円+税/祥伝社黄金文庫/2016年2月11日(木)発売)
Profile
古市憲寿(ふるいちのりとし)
1985年東京都生まれ。社会学者。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)などで注目される。 日本学術振興会「育志賞」受賞。著書に日本社会の様々な「ズレ」について考察した『だから日本はズレている』(新潮新書)などがある。最新刊の 『保育園義務教育化』(小学館)では、女性が置かれた理不尽な状況を描き、その解決策を示す。