薬膳は自分との会話

 「薬膳の考え方のもととなる中医学では、不調が表れるのは体内のバランスが崩れているからだと考えます。薬膳では、食材の力で足りないものを補い、多すぎるものを取り除く。バランスが整った状態である『中庸(ちゅうよう)』を目指します」。薬膳を始めてから、悩んでいた便秘は改善、体調も肌の調子もよくなったという。

「生命力を足すレシピ」(文響社)の料理撮影時のワンショット
「生命力を足すレシピ」(文響社)の料理撮影時のワンショット

 「中庸」を目指す哲学は麻木さんの人生観にも大きな影響を与えた。「病気をするまでは、仕事に子育てに『前進あるのみ』でした。でも、思い通りの完璧なものを求めても無理。時には流れに身を任すことも必要だと思えるように。それからは、感情にゆらぎがあっても、くよくよしなくなりました」。

 薬膳は難しいイメージがあるが、普段の食材でも、外食でも取り入れられると麻木さんはいう。「例えば、飲み過ぎた翌朝は胃もたれにいい大根がゆ、疲れたときは滋養強壮効果のあるとろろそば、というように、『今、自分がどんな状態か』を考えて食べれば、それは薬膳。気分や季節に合わせたお茶を飲むだけでもいい」。薬膳とは自分との会話であり、完全なるオーダーメイド。それが魅力だという。

「ご飯の数だけ自分に向き合う。薬膳のおかげで、今は日々穏やかに過ごせています」

麻木さんの薬膳レシピ みかんの皮入り烏龍茶

「イライラ、ウツウツは気が滞っている状態。柑橘類には気を巡らせる力があり、香りを楽しみながら飲むと気分が落ち着きます」と麻木さん
「イライラ、ウツウツは気が滞っている状態。柑橘類には気を巡らせる力があり、香りを楽しみながら飲むと気分が落ち着きます」と麻木さん

材料
みかんの皮……適量
烏龍茶葉……適量
みかんは無農薬のものを使うか、粗塩をすりこみ、流水で洗ってから皮をむいて。

作り方
1 みかんの皮は、ザルに広げ、カラカラに乾くまで天日に干す。
2 ポットに茶葉と熱湯を入れ、適量の1を加えて蒸らす。

日経ヘルス 2018年10月号掲載記事を転載
この記事は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります

取材・文/村山真由美 写真/寺澤太郎(料理)

この連載は、土曜日に公開。下記の記事一覧ページに新しい記事がアップされますので、ぜひ、ブックマークして、お楽しみください!
記事一覧ページは ⇒ 日経ヘルス Trends & News