働く女性を対象にした国内最大級のイベント「WOMAN EXPO 2015 KOBE」が、11月29日に開催。3会場に分かれ、各界で活躍する方々による講演やセッションが行われました。その一つ「女性のための株主優待入門」では、テレビや雑誌などでも人気の、棋士で株主優待投資家の桐谷広人さんが登場。株主優待の始め方や楽しみ方などを話してくれました。

リーマンショックによる失敗から、株主優待の魅力にはまる

 進行役の「日経ウーマン」編集長の安原ゆかりの紹介で、桐谷さんがジャンパー姿にリュックを背負って登壇。この日着ている服や所持品は、すべて株主優待でもらったものだとして、その一つひとつを説明。「噂通り、ほぼ優待品だけで生活していますので、安心してください」と、笑いを誘います。

桐谷さんは、リュックを背負って登場。株主優待品を使い切るために、自転車で都内を走り回る毎日というエピソードも紹介してくれた。
桐谷さんは、リュックを背負って登場。株主優待品を使い切るために、自転車で都内を走り回る毎日というエピソードも紹介してくれた。

 親交のある女流棋士・林葉直子さんとのエピソードや、「笑っていいとも」出演でブレイクした裏話などを、飄々とした語り口で話していく桐谷さん。場内は一気に桐谷ワールドに引き込まれました。

 桐谷さんが株主優待を始めたのは、信用取引で大損をしたことがきっかけとか。「2005年に3億あった資産が、リーマンショックで4900万円まで減りました。家賃と公共料金を払ったら、手元に現金が全くなくて、優待品のお米や優待券などでしのぎました」(桐谷さん)。それがきっかけになって、本格的に株主優待生活を始め、テレビ出演で人気者になるとは、ご本人も予想していなかったそうです。

 桐谷さんによれば、株主優待は日本独自のシステムで、バブル崩壊後、株価の下落で企業の資金調達が難しくなり、個人投資家を株主として増やすために考えられたといいます。最近では、株主優待のメリットが企業にも浸透し、上場企業3600社のうち、3分の1が株主優待制度をもっているのだとか。

 株主になると、優待券や商品をもらえたり、定期預金より利回りの高い配当金を得られたりし、企業も優待株を目的に株主になる人が増えることで、株価も上がり、経営的にメリットがあります。「余裕資金で優待株を持つことは、その企業を応援することになり、ひいては日本経済の発展にも役立ちます」と桐谷さん。

 では、株主優待を始めるなら、どんな銘柄を選ぶのがいいのか。「女性なら化粧品会社がオススメ」と、桐谷さん。シーボン化粧品、はるやま、As-meエステール、THEグローバル社、マクドナルド、アトムなど、女性におすすめの銘柄とその優待のポイントを教えてくれました。

 「魅力的な優待のある企業の株は、個人投資家も売りたがらないので、比較的株価が安定しているのも魅力です」と桐谷さん。ただし、業績悪化などで急に株主優待をやめる企業もあり、その際には株価が大きく下落する可能性もあるので、注意が必要だそうです。

「余った資金で低値の株に分散投資」が、賢い株式との付き合い方

 株式投資について、「株は乱高下が大きくて恐い」「株はギャンブル」などという印象を持つ人も多いかもしれません。でも、それは誤解だと桐谷さん。株式投資は余裕資金で行うことが基本と教えてくれました。

「優待株投資は、NISA口座でも行えますよ」と桐谷さん。
「優待株投資は、NISA口座でも行えますよ」と桐谷さん。

 講演の終盤、「お金に愛される人とはどんな人でしょう?」という編集長からの問いかけに、「堅実な暮らしをする人だと思います」と、桐谷さん。「私も投資で儲かってくると、気が大きくなって、借金までして株を買い、結局大損をしました。暮らしも運用も堅実に、大言壮語しないことが大切だと思います」(桐谷さん)。

 最後に、桐谷さんからメッセージが。「私が連載している雑誌の記事のほかに、優待株を多数持っている一般の個人投資家のブログも参考になりますよ。株式投資は値下がりのリスクはありますが、あまり怖がらずに、優待株を買ってその割引券で友達とお茶を飲んだり、お酒を飲んだり、旅行に行ったりして、楽しい人生を送っていただきたいですね」(桐谷さん)。

 ご自身の経験をユーモアたっぷりに話しながら、株主優待の魅力を説明してくださった桐谷さん。講演を聞いて、株主投資がぐっと身近なものに感じられました。