イライラさんは、そばにいる人を消耗させる

 イライラさんがそばにいると、それだけであなたのエネルギーは消耗しています。 第2回「『余裕がある人が羨ましい』と感じたときの心の調整法」の冒頭でお話しした、「原始人だったら……」であなたの心を捉えてみると、それがよく分かります。

「原始人だったら……で分かるあなたの消耗の意味」

 人の感情は、すべて目的を持っています。特に、イライラ=怒りは、「危険があるから警戒しろ、身を守るためにすぐ反撃しろ、威嚇しろ」という明確な目的を持つ、最も緊迫した、攻撃的な感情です。怒っている原始人の近くにいる人は、その攻撃のとばっちりをいつ受けるかわかりません。ですから、こちらもつねに緊張して対応をしなければなりません。

 イライラさんは本質的に「何をするか分からない人」ですから、いくら理性で「この人の怒りと私とは関係ない!」と思っていようと、そばにいるだけでなんとなく不安でそわそわしてしまい、エネルギーを消耗していくのです。

 さらに、イライラさんを助けたいと思っても、その思いは空振りすることが多いのです。

 なぜなら、怒り心頭のイライラさんは、その人の意見に完全に同意するような意見以外は、受け付けないからです。

 中途半端に「その気持ちも分かるよ。でもね……」という対応をすると「全然分かってくれない!」と逆ギレされかねない。

 つまり、とても視野が狭くなっている赤コンピューターの状態の相手に、青コンピューターのあなたの答えは、受け取ってもらえないのです。あなたがいろいろと考えて力になろうとすればするほど、赤コンピューターは、真っ赤に、かつ、頑なになってしまう。話し相手になるたびにあなたは無力感を感じるでしょう。

 だからこそ、あなたがこれ以上消耗しないためには、イライラさんから「離れる」ことが必要です。

 できるだけ距離を取れば、そのイライラを見たり、感じたりしなくて済むからです。

 もちろん、そのイライラさんの感情レベルを落とすプロであるのが、カウンセラーです。

 カウンセラーは相手をサポートすることが仕事ですから、がっつりと話を聞いた後、「そうなんですね。そのような状況だと、相手と戦わなければいけないのですね。でも、消耗していませんか? まずは休みましょう」とお話をする。そして実際に休息を取ることができると、赤コンピューターが青コンピューターに変わり、イライラさんも「あれ? それほど大変な状況じゃなかったかも」と言い出すのです。

 とはいえ、カウンセラーの私でも、もしクライアントがあまりにも私を攻撃してくるようであれば「ごめんなさい。残念だけど僕はあなたをサポートできない」と笑顔で距離を取るでしょう。

 一番良くないのは、攻撃を受けながらも相手をサポートし続け、自分自身のエネルギーを使い果たしてしまうこと。それは、結局「サポートの形をした我慢大会」になってしまいます。そうなる前に、例えば身近なイライラさんなら、その方が席に戻ってきそうなタイミングでこちらが食事に行く、外出する仕事を増やす、など物理的に接する時間を減らしてみるのも一つの方法でしょう。