それは、代案の後にひと言フレーズを添えればいい。まずは会議で批判的な発言を述べる。あえて反対意見がなくとも、30代なら批判的な発言を心掛けよう。もちろん、批判できるだけの知識、根拠となる情報を蓄 えてないといけないが、現場をよく知る30代なら大丈夫だ。

 続いて代案を言う。ポイントは、「代案」の次に「ポジティブフレーズ」を付け加えることだ。これだけでいい。

 「黒悪魔の代弁者」の反対発言が場の空気を悪くする理由は、後味が悪いからだ。ネガティブな内容を言いっ放すことが周囲の印象を悪くするのだ。そこで、最後に「もっと良くなります」というポジティブフレーズをひと言添えるだけで、会議の空気は一気に柔らかく、前向きになる。

これが、角が立たない「白悪魔」の代弁者になる公式です
これが、角が立たない「白悪魔」の代弁者になる公式です

 例えば、取引先を接待する店をどこにするか、上司を含めた数人と打ち合わせをしている。誰かが、「焼肉はどうですか」と提案し、焼肉店に決まりかけているとしよう。

 ところが、30代のあなたは接待相手のことをよく知っている。「多忙な取引先は、接待が続いて胃が疲れている。また多くの部下を抱えて毎日朝礼を開いているので、焼肉の臭いは敬遠したいはずだ」との情報を持っている。

 それなのに焼肉店に決まりかけている。打ち合わせに同席している上司も、「じゃ、焼肉でいくか」とゴーサインを出した。どうする? このまま焼肉にすべきか? いや、相手のことを知っている自分が反対意見を言ってひっくり返すべきか?

 ここで、臆してはいけない。「悪魔」の出番だ。焼肉を否定しよう。こんな風に。

<黒悪魔の代弁>

「いや、焼肉は反対です。お客様の胃に負担がかかるし、臭いもついちゃうし」

 これは、「黒悪魔」の発言だ。決まりかけた結論を批判しているだけで、後味が悪い。代案もないので結論を変えるのは難しい。そこで、「白悪魔」の出番だ。焼肉を否定するが、代案を出して、ポジティブフレーズを添えよう。接待相手のことを知っているのは自分だけしかいない。

<白悪魔の代弁>

「いや、焼肉より、和食の小料理店(代案)にしましょう。相手は会食続きなので、胃に優しい和食の方が喜ばれます。接待の雰囲気もずっと良くなるはずです(ポジティブフレーズ)」

 どうだろうか。「焼肉」を全否定しているところは、両者とも同じ。だが「白悪魔」の発言は、相手を喜ばすということで、接待を成功させたい前向きな提案に聞こえる。

 たったひと言が、劇的に印象を変えるのだ。

文/横田伊佐男 イラスト/和田ラヂヲ


「ムダゼロ会議術」

著者:横田伊佐男
出版社:日経BP社

 ■ Amazonで購入する

◆サブタイトル、本文の一部を修正しました。(2018年10月9日)