有効求人倍率が1.60倍という44年ぶりの高水準を記録するなか、主婦の働き方にも異変が起きている。リクルートワークス研究所労働政策センター主任研究員の大嶋寧子さんは、夫の扶養の範囲を超えて働く主婦が増えている現状を指摘した上で、その動きは2020年以降ますます加速するだろうと予測している。課題は賃金だ。「復職して年収200万円」は、はたしてどこまで現実的か──。

今、主婦の働き方に大きな変化が起きている
今、主婦の働き方に大きな変化が起きている

中核人材の男性が減り、女性へシフトしていく

 「今後、女性の復職人材への注目はますます高まっていくでしょう。しかも、それが加速するのは、2020年の東京オリンピック以降だと思います」。

 主婦の再就職支援事業などを手がけるWaris(ワリス)主催の勉強会「日本の輝ける未来のためのリカレント教育と女性の復職」で、大嶋さんはこのように指摘した。

 根拠の一つは、「これまで企業の中核を担ってきた働き盛りの男性人口が減っている」ことだ。国立社会保障・人口問題研究所のデータを基に、25歳から49歳の男性人口が5年ごとにどれくらい減少しているかを見ると、2005年にはマイナス25万人だったのが、2010年にはマイナス45万人、2015年にはマイナス133万人と減少幅が大きくなっている。2020年には、さらにマイナス180万人と予想されている。

 一方で、女性雇用者は2017年までの15年間に400万人以上増えている。就業希望者をシニアや未婚などのカテゴリーに分け、男女別にどれくらいのボリュームがあるのかを見た場合でも、既婚女性は約300万人と、未婚男性や男性シニアの倍以上だ。

総務省「労働力調査」より大嶋さんが作成
総務省「労働力調査」より大嶋さんが作成

 特に仕事に就いていない30代、40代の主婦層には、かつて高い教育を受け、企業で総合職や専門職を経験したことのある人も多い。潜在能力の高さという意味でも、量的に期待できるという意味でも、今のところ主婦層以上に有力な潜在労働力は見当たらず、企業にとっても無視できない存在になっている。

 実は家庭の主婦が働きに出る動きは、既に1990年代後半から加速していた。「背景にはやはり、夫の収入減をどう補うかという現実的な問題があったと思います」と大嶋さんは指摘する。

 多くの家庭ではこれまで家計のピンチを主に支出削減で乗り切ってきたが、それもいよいよ限界を迎え、主婦も扶養の範囲を超えて本格的に働き出さなければならなくなってきた。「女性雇用者が400万人以上に増えた背景には、そんな苦しい台所事情があるのは否めないのではないか」と大嶋さんはみている。