現在、乳がん検診として行われている主な画像検査はマンモグラフィーです。

 マンモグラフィーは、機械で乳房を挟み込み、レントゲンを当てることによって乳がんの有無を診断するという検査です。簡便で比較的安価だし、世の中に広く普及していて、蓄積されているデータも豊富です。

 検査することにより、乳がんの死亡率を減らすというエビデンス(科学的な証拠)があるのは、現状ではマンモグラフィーだけです。そのため自治体の健診ではマンモグラフィー以外は原則的に認められていません。

 ただし、これは必ずしもマンモグラフィーがベストだということを意味しているわけではありません。残念ながらいくつかの弱点があるのです。

 まず、乳房を強く挟み込んで検査をするので、時に強い痛みが生じます。検査が不快であれば定期的に受けようというモチベーションが下がってしまいます。この点は、健康な人が自発的に受けるというがん検診の性質上、一つのマイナスと言えるでしょう。

絵/近藤慎太郎
絵/近藤慎太郎

 次に医療被曝(ひばく)をするという点です。被曝量は決して多くはないので、原則的には問題になりません。ただし一つだけ注意点があります。それは、BRCA1/2遺伝子変異を持つ人たちです。この乳がんのリスクが非常に高いグループに関しては、マンモグラフィーによる被曝が発がんを助長する可能性があるのです。

 そのため、30歳未満の場合は避けるべきと報告されています。自治体の健診で乳がん検診の対象が30歳未満となることはありませんが、仮にあなたが30歳以上でも、近親者に乳がんにかかった人がいる場合は、検査を担当する医療者にきちんと伝えるようにしてください。

 次回は、このマンモグラフィーの弱点について、詳しく解説しましょう。

絵・文/近藤慎太郎


「医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方」

著者:近藤慎太郎(絵と文)
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■参考文献
(1)US Preventive Services Task Force. Screening for breast cancer:U. S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med 2009;151:716?26, W?236
(2)Pijpe Aetal;GENEPSO;EMBRACE;HEBON. Exposure to diagnostic radiation and risk of breast cancer among carriers of BRCA1/2 mutations:retrospective cohort study(GENE-RAD-RISK). BMJ. 2012;345:e5660.
(3)Ohuchi N et al;J-START investigator groups. Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial(J-START): a randomised controlled trial. Lancet 2016;387:341-8
有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン 2013年度版
乳癌診療ガイドライン 2015年版