毎朝、顔を洗って歯を磨くのと同じ

 人生が続く限り、ライバルは「昨日の自分」。こう話すと「それをやり続けるのはしんどい」とよく言われます。確かに毎日100%以上のエネルギーで臨むには気力と体力が必要なので、他人をライバルとするよりよほど大変かもしれません。

 それでも続けていくうち、いつかそれが習慣になります。毎朝起きたら、顔を洗って歯を磨くのと同じ。自己更新を習慣化してしまえば、さほどきつく感じないのではないでしょうか。

 一番大切なのは、自己更新に向かう心構えだと私は思います。

 いくつになっても「自分はまことの花」だと思わないこと。いかに上手な能役者でも思い上がっていると芸が駄目になります。ましてや、未熟者ならばなおさら。おごらないこと、謙虚であること、そして精進を重ねることです。

 「もうこれでいい」「自分はできている」と自己満足に陥っていないか。努力を怠っていないか。折々に自分に問いかけることが大切でしょう。

 いかに修業を積んで、自己更新していくか。一流を目指すとは、そういうことなのだと思います。一流と呼ばれる人は、ただただそこに向き合っている人です。それがすべてと言っていい。

 そこまでやり続ける意思があれば、いつかできるようになる日が来る。ジャパネットのMCなら「高田明を超えたい」というそんなレベルではなく、「お客様に感動を伝えたい」と本気で思い、それを達成しようという強い信念を持って、その瞬間を一生懸命に生きているかどうか。

人間は二度死なない

 人間はどんなに頑張っても2回は死にません。1回生まれたらみんな1回死んで、次の世代にバトンタッチする。だったら一度きりの人生、精いっぱい生きる人生にしたいと思いませんか。今を一生懸命生きたら、明日が絶対よくなる。私は日々そう思いながら、今を生きています。

 私は、「信と疑」という言葉を大切にしています。

 いちずにやり続けるのにも力が要ります。それには、自分を信じること。自分を信じ切れないから途中で諦めてしまうのです。「努力をしている人は必ず誰かが見てくれている。自分の思う通りの自分になれるよ」と社員に言ってきました。

 と同時に、自分自身を疑うことも大切です。いくつになってもできていないことを謙虚に受け止めて、自己更新を図る。

 私自身、まだまだ成長の途上にあると信じています。生きている限り、自己を更新するという生き方を貫くことが、次の世代に私の思いを伝えるのに最もいい方法なのかなと思っています。

聞き手・文/荻島央江 人物写真/菅 敏一 イメージ写真/PIXTA


「高田明と読む世阿弥 昨日の自分を超えていく」

著者:高田明、監修:増田正造
出版社:日経BP社

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