大賞はしなやかに働き方改革を実践する中村さん

 最後に大賞が発表された。受賞したのは1日100食、ランチのみ提供する「佰食屋」を経営する minitts代表取締役・中村朱美さん。「家族で夕食を食べたい」という思いから夫婦で起業し、2歳と4歳の子育て真っ最中の中村さん。京都で展開する人気の3店舗は100食売り切ったら閉店するため、スタッフの残業はゼロ。2017年には売り上げが1億円を突破し、フランチャイズ化も計画中で「短時間でもやりがいを持てる営業形態」を広め、飲食業界の働き方改革を先導している。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019大賞は、minitts代表取締役・中村朱美さん
ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019大賞は、minitts代表取締役・中村朱美さん

 新実傑・日経BP社社長から盾を受け取った中村さんは「きっかけは、家族でした」と切り出した。「結婚後に10坪14席の小さな定食屋を始め、二人の子どもを授かったが、現在2歳の長男は脳性麻痺で今も月1度の通院と1日3回のリハビリが必要。どうすればもっと長く一緒にいられるか、どうやったら一緒に夕食を食べて楽しく過ごせるのか考えた。そして私が働きたいと思う働き方を追求したら、それがすべての人が求めている働き方だった。仕組みでモチベーションは上がるし、残業なしで休みも取れる。仕組みで人を幸せにするこの働き方を、もっと広めていきたい。新たな挑戦として1日50食限定の『佰食屋2分の1』の展開も計画中です!」と満面の笑顔でスピーチを締めくくった。

 総評として、編集長の藤川は「あえて儲けを追求せず、優先順位の1位は家族で夕食を食べること――これは特殊解かもしれないが、これまで多くの人が無意識に持っていた成功やヒットの方程式を覆し、自分なりの成功モデルを作ればいいと教えてくれた。人生100年時代に向けて、息切れせずに働くには多様な働き方が必要。受賞者はそのための気付きをたくさん与えてくれた」とまとめた。

 最後に、後援の内閣府から男女共同参画局長・池永肇恵(いけなが・としえ)さんが登壇。

内閣府男女共同参画局長・池永肇恵さん
内閣府男女共同参画局長・池永肇恵さん

 「受賞した10人の皆さんに共通するのは、やりたいことがはっきりしている、常識にとらわれない、社会的に影響がある、人を幸せにする、次世代によりよい社会を残したい――そういった方向でキャリアを追求している点。こういう方が増えることが、社会に力を与えよりよい日本をつくっていくと感じる。男女共同参画局では、頑張っている皆さん、輝いている皆さんを応援できる施策をこれからも考えていきたい」と話し、熱気に包まれながら表彰式は幕を閉じた。

文/加納美紀 写真/竹井俊晴