誰もが求められる「知の探索」

 ここでいうイノベーションとは、例えば会社で新規事業を立ち上げる、ちょっとした改善を提案するなど、何か少しでも新しいことをやって前に進むこと。「程度の差こそあれ、これからは誰もがキャリアの中で求められる」と入山さんは言います。

 「イノベーションの第一歩は、新しいアイデア、新しい知を思いつくこと。それは常に、今ある既存の知と、別の既存の知の新しい組み合わせなのです」(入山さん)

 この「イノベーション=新しい組み合わせ」という考え方は、ジョセフ・シュンペーターという経済学者が80年以上前から主張していることで、現在も世界標準となっているものだそう。では、新しい組み合わせはどうやって生み出されるのでしょうか。

 「例えば同じ会社や同じ部署に長くいると、組み合わせが出尽くしてしまう。そこから脱却するには、なるべく自分から離れた遠くの知を幅広く探索して、今持っている知と新しく組み合わせることが重要です。これを専門用語でexploration、私は『知の探索』と訳しています」

 「知と知の組み合わせ、知の探索」、これが一つ目のキーワードです。知の探索は、ダイバーシティとも関連していると入山さんは言います。

 「さまざまなバックグラウンドを持った人が集まれば、結果的に知と知の新しい組み合わせが起きる。ただ、ダイバーシティにはもう1種類あって、みなさんが知の探索をしていろんな経験をすれば、自分自身の中でいろんな知見を組み合わせることができます。これが二つ目のキーワードでもある『イントラパーソナル・ダイバーシティ』。今経営学でもっとも注目を集める研究分野の一つです」。イントラパーソナル・ダイバーシティとは、個人が一つの専門分野に特化するのではなくダイバーシティを兼ね備えることを指します。