2016年12月3日(土)に東京ミッドタウンで行われた、働く女性を応援するイベント「WOMAN EXPO TOKYO 2016 Winter」。多彩なテーマでお届けしたセッションの中から、経営学者で早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄さんのセッションの模様をお伝えします。「世界最先端の経営学で人生を変える」と題して、キャリア形成に必要なことを経営学の視点から分かりやすく解説してくださいました。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー受賞者と先端経営学の意外なカンケイ

 日経ウーマン本誌で掲載していた連載「カイシャと私と働き方の経営学」(~2016年12月号)でもおなじみの入山さんは、2013年まで10年間にわたってアメリカで活動。世界標準の経営学と、さまざまな経営者の事例を交えて導き出したビジネスパーソンがこれからのキャリアを考えるうえで身につけておきたい「三つの視点」について解説しました。

 一つ目の視点について具体的に説明に入る前に入山さんがまずトピックとして取り上げたのは、先ごろ発表された「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017」です(参考記事・「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2017発表!」)。大賞を受賞したのは大ヒット映画「君の名は。」の宣伝プロデューサー、弭間(はずま)友子さん。そのほか各部門賞に選ばれた方々の中から、デザインものづくり賞の林千晶さん、食ビジネス革新賞の小林せかいさん、イノベーティブものづくり賞の小島由香さんを紹介しました。

 「興味深いことに、この4人には共通点があります。それは『マルチキャリアの持ち主』ということ。現在複数の仕事をしているか、あるいは過去に異なる分野で働いていた経験がある人ばかりなんです。

 弭間さんはずっとPR畑を歩んできましたが、実は3、4回転職していて、アニメだけでなく海外の実写映画やイベントなども手がけてきた。林さんはロフトワークという会社の代表で、クリエイターと企業をつなぐビジネスのほか、飛騨の森林の再生にも取り組んでいる。でも元々はジャーナリスト志望で、共同通信社で働いていた。

 小林さんは、50分働いたら1食分タダになるなど、新しい仕組みを取り入れた飲食店『未来食堂』の代表ですが、元々は日本IBMのエンジニア。小島さんは今もっとも注目を集めるVRの技術を持った会社『FOVE』のCEO。かつては漫画家志望で、編集者がつくところまでいった人です。

 なぜ今、輝いている女性たちがマルチキャリアの持ち主なのか。これは偶然ではなく、イノベーションの本質に関わってくることなんです」(入山さん)