今日の季節を五感で味わってみる

 皆さんは、梅雨の頃の雨音と秋雨の音の違いがわかりますか。

 梅雨の頃はパラパラと葉に雨があたる音がします。葉の枯れた秋にはそれがありません。

 「雨の音って、葉っぱの若さの音なんだ」

 と著者の森下典子さんはお茶を習う中で発見します。心と季節を重ね合わせ、その日一日を存分に生きる。こうした茶の湯の精神が、雨音の違いを気づかせてくれるのです。

 「日々是好日」は、お茶の世界を通して日本人が何かを学ぼうとするときの姿勢を教えてくれる本

 「お茶はね、まず『形』なのよ。先に『形』を作っておいて、その入れ物に、後から『こころ』を入れるものなの」という師匠の言葉に、私は日本文化の神髄を見ます。習うより慣れ、手に神経を通すことによって世界が羨望する技術開発力を育んだ真ん中にお茶の心があるように思えるのです。

 著者は言います。「気づくこと。一生涯、自分の成長に気づき続けること。学びとはそうやって、自分を育てることなのだ」と。

 他人と比べられ「ダメだし評価」を恐れてビクビクする毎日から離れ、茶の湯の世界に心を遊ばせる。それが無理ならこの本を読んで、今日の季節を五感で味わってみてください。

 自分では見えない自分が成長するのがわかります。今、生きている実感があなたに存分な自由を味合わせてくれるはずです。