キョンキョンの人気の秘密
これを読んだのは、私が重い病の手術を終えて自宅で療養している時でした。「死」というものは、案外間近にあるものだ。そんな気持ちが体に残っていただけに、小泉今日子さんの描く風景が強く印象に残りました。
何よりも、人の死や、親の離婚について、べたつくことなく、変に高揚することもなく、一定の距離感を保ちながらさっぱりと、見事な情景描写で描くキョンキョンの筆力に、脱帽するばかりでした。
もしかすると、小泉今日子というタレントが、50代になっても人気のある秘密はここにあるのかもしれません。
浮き沈みの激しい芸能界、世間一般が思う「幸福」とは言いがたい家庭。しかしキョンキョンは、それを憂うでもなく、時折、「めんどくせー」と本音を吐きながら、一人で自分の世界を構築している。その世界に閉じこもることなく、本を開けばキョンキョンの幼なじみや姉さんたちと私も友だちだったように錯覚するほど、惜しげもなく、すっぴんの思い出話を語ってくれるのです。
キョンキョン自身はこの感覚をこんな風に語っています。
「思い出すというか、甦る。遠い過去の記憶という感じじゃなく、私の中に眠っていたものが目を覚ますような感覚」
思い出話でないからこそ、50を過ぎても、男でも女でも自分の友だちの話のように読むことができる。読み手の中に眠っているものまで目を覚まさせてくれる。
病気や元気のない友だちに、プレゼントする本としては最高の一冊じゃないでしょうか。
文/ひきたよしあき 写真/PIXTA
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