人間だと思うから辛くなる、虎やゴリラだと思えば…
「山月記」は、人間の核心を実によく突いています。
プライドが高く、心が狭く、猜疑心が強く、嫉妬深い。そういう人間の中には人間の心の他に、人を食ってしまう虎が住んでいます。
「なんで私が、あの人の下なのよ」「私のまわりはバカばっかり」「あの人のやる仕事なんて、どうせダメに決まってる」と人に対して牙を向けていると、やがて自分自身の「人間のこころ」にまで痛めることになります。
こういう人が、私の周囲にもたくさんいます。じっと顔を眺めていると、いつか虎に変身するのではないかと思います。いっしょに仕事をすると辛くてたまらないのですが、昔書いた「パロディ山月記」を思い出し、「この人、変身するならゴリラだなぁ」なんて考えてみたり。
文学の読み方は実に色々です。「山月記」は私にとって文章修行の手本でもあり、一服の清涼剤でもあり、イヤな人とつきあうときの「逃げ道」ですらあります。
あなたも仕事で、パワハラ男、イヤミ上司、優柔不断な部下などと遭遇することがあるでしょう。そんな時、虎やゴリラやカバだと思って眺めることをおすすめします。いつもと違った視点で眺めれば、それなりのつきあい方が発見できる、そんなヒントを与えてくれる本です。
文/ひきたよしあき
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