落ちこんでいるときに元気がもらえたり、新しい視点が得られたり……ときには、人生が変わるほどの大きな力を持つ「本」。広告代理店のクリエイティブプロデューサーとして数多くの「人の心を動かす言葉」を生み出してきたひきたよしあきさんによる『あなたを変える「魔法の本棚」』連載では、読むたびに自分の個性や知性が磨かれ、人生が前向きに変わっていくことを実感できる“特別な一冊”を厳選して紹介していきます。

◆今回のことば

「空インクの達成感」

――頭がよくなる「青ペン書きなぐり勉強法」より

頭がよくなる「青ペン書きなぐり勉強法」
頭がよくなる「青ペン書きなぐり勉強法」

 誕生日に万年筆をプレゼントした人が、こう言ってくれました。

 「スペアインクが空になって、新しいものを目指すたびに万年筆と親しくなれたような気がします」

 この気持ち、よくわかります。40年近く万年筆を愛好している私でさえ、空になったスペアインクを捨てられないでいます。ひとつの作品を書く時に、空のスペアインクを並べて励みにすることもよくあります。

 この青ペン勉強法の根っこにある気持ちは、「空インクの達成感」です。水性ボールペンのインクが意外なほど早く消費するのを利用して(?)、がんがん書きなぐることへの励みにするのです。大きなA4サイズのノートに、何度も何度も暗記したい単語や文章を書きなぐっていく。掲載された受験生のノートを見ると、「書きなぐり」という言葉がぴったりなほど、書いて書いて書きまくっているのです。

 私にこの本を教えてくれたのは、超有名外資のコンサルタントでした。浪人時代にこの方法を予備校の「早稲田塾」で習って以来、大学に入ってからも青ペン学習を続けたそうです。その成果なのか、仕事をしているときの書くスピードと集中力がケタ違いにすごい。あまりのすごさに秘密を聞いたのでした。

 「結構、社会に出てからも続けている人いますよ。僕なんか学生時代からずっと空になったインクの芯を保存しています。落ち込んだときはそれを眺めます。」確かにその後注意してみると、若くて優秀な人のなかに水性の青ボールペンを使ってガンガン書く人がいました。多分皆、同じ予備校出身なのでしょう。

 彼らは頭ではなく指先で記憶する方法をマスターして大学で学び、社会に出ました。パソコン全盛の時代にかなり異色ですが、その成果は目を見はるものがあるようです。

(C)PIXTA
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