落ちこんでいるときに元気がもらえたり、新しい視点が得られたり……ときには、人生が変わるほどの大きな力を持つ「本」。数多くの「人の心を動かす言葉」を生み出してきた博報堂クリエイティブプロデューサー・ひきたよしあきさんによる連載「あなたを変える、魔法の本棚」では、読むたびに自分の個性や知性が磨かれ、人生が前向きに変わっていくことを実感できる“特別な1冊”を厳選して紹介していきます。

◆今回のことば

「人間本来の『生き物』としての生き方を少しでもとり戻す」

――「季節を生きる」より

「季節を生きる」(福原義春 毎日新聞社)
「季節を生きる」(福原義春 毎日新聞社)

 昨年末に手帳を三冊買いました。

 一冊は、ビジネス用の手帳。もう一冊は日本人が慣れ親しんできた「旧暦」で編集されたもの。長く自然を観察してきた人間が小さな変化に目をつけた「二十四節気」で時間を区切った手帳です。

 人に与えられた時間は同じなのに、三冊の手帳を眺めていると不思議な感覚にとらわれます。

 大きなプレゼンが入ったり、長い出張の予定の入ったビジネス手帳に重ねて「旧暦手帳」を見れば、その日が新月だったりしている。そこに「二十四節気」を重ねてみると、暦の上ではもう春になっていたりするのです。

 日頃、オフィスビルに閉じ込められている身としては、天体に心を奪われ、水ぬるむ春の情景を思い浮かべることができるのはありがたい。時の流れも見方しだい、考え方しだいでいくらでも変わるのが嬉しくもあります。