「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回は、奇抜な企画をクライアントに通した上司の話を聞き、唖然としたヤグチでしたが……。
前回までのお話→ 前書き、第一回、第二回、第三回、第四回、第五回、第六回、第七回、第八回:奇抜なことに全力な上司 部下の私はついて行くべき?
【第九回】相手を努力で説得する
「この企画を提案したときのクライアントの反応はどうだったんですか?」
「目を丸くしていたよ」
やはりそうか。常識的に考えればちょっとありえない。
「でも、従来の広告が通用しにくい今、インターネットでは、ここまでやったほうがいいんです」と上司は説得したという。その言葉に重みがあるのは、実績があるからなのだ。
いや、そうは言っても、相手が首を縦にふらないことだってあるはずだ。
「いくらなんでも、腕時計が時間にルーズって! おかしいでしょ!」なんて言われたらどうするんだろう。
「チーフはいつもどうやって企画書をかくんですか?」
「基本的には、努力して執拗に考えるかな。どうしたら相手に刺さるか、ひたすら考えるね」
「相手って、企画書を読む人ですよね」
「もちろん」
そうか……。
私は、企画書を読む相手がよろこぶような提案ができていないのだ。
ただ、こうなったら自分がうれしい、ということを書いているだけなのだ。
声優は、ウェブメディアに自分が出たら、何がうれしいだろう。