人に言えない趣味はあるけど

 そもそも私は、仕事に命を懸けたことなんて一度もない。普通、しないだろう。だから当然、この占い企画に命が懸かっているわけがない。
 上司は訳がわからないことを言う人だと思っていたけれども、自分の“無気力”については、思いっきり見透かされているような気がした。

 「すみません。こういう企画は出したことがなくて……。つまらないですよね……」
 「いや、あやまらなくていいんだ。ただ、なんかさ、ほかにもっと好きなものがあるんじゃないかと思って。ヤグチさんが休日の時間をつぎ込んでいるものとかないの?」
 「うっ。休日……ですか……」
 「さすがに休日ぐらい、何か趣味に費やしてるでしょ?」
 「い、いえ……何もないですよ」
 「ひょっとして、人には言いづらいようなもの?」
 「いやぁ……」

 趣味のようなものは、一応ある。でも会社の人にはいえない、と思っていた。