「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、憧れの声優・オダマモの本の執筆を依頼されたヤグチでしたが……。

前回までのお話→ 前書き第一回第二回第三回第四回第五回第六回第七回第八回第九回第十回第十一回第十二回第十三回第十四回第十五回第十六回第十七回第十八回第十九回:仕事中に泣いてしまった 原因は2通のこんなメール

【第二十回】新しい始まり

 いよいよオダマモインタビューの日になった。
 私は徹夜明け。
 緊張して眠れなかったわけではない。ただ仕事が終わらなかったのだ。
 メイクののりがいまいちだとか、顔が疲れているとか、気になることはたくさんあったけど、もはや仕方がない。
 腹をくくった。
 初めてのインタビューとは違う。緊張を克服しなければ……!
 そう言い聞かせながら、勇気を振り絞って言った。
「ライターのヤグチユミです。よろしくお願いします」
「ヤグチさん、お久しぶりです」

 オダマモが私のことを覚えてくれてる……。
 瞬間、全てが飛んでしまった。フワフワと体が浮かんでいるようでイスに座っているという感覚もなくなった。生きた心地がしない。

 これではまるで、初めてインタビューしたときと同じではないか!
 いや、それよりひどい。私には進歩というものはないのか!

 「書籍のためのインタビューは、今日も含めて5回行います」

 ハシモトさんが説明する。
 ああ、そんなにたくさん会えるなんて、うれしい!

 「そ、それではさっそく、質問です。子供のころ好きだったアニメは何ですか?」
 「ええ~っ。そんな昔から始めるんですか?」
 「もちろんです!」

 部屋の中が爆笑で包まれた。
 私はICレコーダーのスイッチを入れた。