「何のために働いているのかわからない」。そんなこじらせOLが主人公の小説『言い訳ばかりの私を変えた夢みたいな夢の話』を、本連載「才能がない人の夢のかなえ方」としてお送りしていきます。前回、クレーマーに連絡を取って会いに行ってみたヤグチ。今日も忙しく残業をしていたところ、上司から驚愕の時短テクを聞かされることになります……。

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【第十八回】上司のスランプ

 その日も私は原稿が終わらず、オフィスに残っていた。
 すると、上司がふらりとやってきた。
 「自宅から来たんですか? 徒歩1分の」
 「いや、外で打ち合わせしてから戻ってきたんです。それに、家は電車でひと駅のところに引っ越しました……。近すぎると働きすぎちゃって」

 珍しく沈んでいるような気がした。
 どうしたのだろう?

 「何かあったんですか?」
 「特に何もないんですけど、アイデアが思いつかなくて、苦戦してます……」
 「えっ。LINEスタンプのグッズも発売になって、ますます絶好調じゃないんですか?」
 「それはそうなんですけどね……」

 こんなふうに力なく話す上司は初めてだ。