誰もが持つ“ガラスの天井”を打ち砕く力

 ヒラリーは、2008年の大統領選挙のときにも、オバマ大統領に敗れた経緯があります。そのときには「この道は、次はもう少し進みやすくなるでしょう」と語っていました。残念ながら夢破れた2度目の今回は、女性の前に立ちはだかる目には見えない「ガラスの天井」について、「いつか近いうちに打ち砕ける」と女性や女の子たちの背中を押しています。若い人たちに向けたこの言葉が、今回のスピーチの核心部の一つといえるでしょう。

「ガラスの天井はいつか近いうちに打ち砕ける」 (C) PIXTA
「ガラスの天井はいつか近いうちに打ち砕ける」 (C) PIXTA

「すべての女性のみなさん、(中略)みなさんの代弁者となれたことが、私の最高の誇りです。
To all the women, and especially the young women, I want you to know that nothing has made me prouder than to be your champion.

私たちはいまだ、あの高いガラス天井を打ち砕くことができていません。しかし、きっと誰かが、いつの日か、私たちが思うよりも早く叶えてくれることでしょう。
I know that we still have not shattered that highest glass ceiling. But some day someone will—hopefully sooner than we might think right now.

それから、今この演説を聞いている女の子たちへ、あなた方には価値があり、強さも備え、この世界であらゆることに挑戦するにふさわしいということを、決して疑わないでください」
And to all the little girls watching right now, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world.

 潔く、りりしく語りかけたヒラリー・クリントンの敗北宣言。ヒラリー自身と社会の痛みを感じさせ、みんなに今回の選挙の意味とこれからのあり方を考えさせた、心に残る名演説となりました。

文/上野陽子 写真/PIXTA