男性が女装したい本当の理由

 かなりの割合でやってみたい男性がいる女装ですが、その願望にもいくつか種類があるようです。

 まず、肉体的な性と精神的な性での食い違いで違和感がある人には真剣な話です。女装することで心が安定するケースもあるかもしれません。

 そうでない場合の「変身願望説」は、日常に飽きたときの、ちょっとした刺激剤みたいなもの。少し前にも、俳優の浅野忠信さんがインスタグラムにアップした、金髪やボブにリボンという女装風写真に反響がありました。これは、ただの加工のいたずら。日常に刺激を与える楽しみ方の一つではないでしょうか。

 そして、女性の服装をして楽しむのは「男性という役割からの解放」という心理学の説もあります。「男は強くなくてはいけない」や「女性を守らなくてはいけない」など、「男はこうであるべき」という社会的に期待されている重責があります。でも、形だけでも女性になることで解放されて快感……というわけです。

 レストランなどのドレスコードでも、女性のサンダルは許されても男性はダメ。さらにはポロシャツであっても、入り口でネクタイを貸し出して着用させられることがあります。ポロシャツにネクタイ姿のほうがよっぽど滑稽に思えますが、決まりは決まり。これがドレスコードであり、社会というものでもあります。

「男子はジャケット着用を強いられることがあるんだよぅ……」心のつぶやき  (C) PIXTA
「男子はジャケット着用を強いられることがあるんだよぅ……」心のつぶやき  (C) PIXTA

 ちょっとおしゃれしていれば幅広く許される女性に比べて、男性は社会的な役割もさることながら、ドレスコードも女性よりも重いこともあるのです。

 さて、イギリスの学校では、その後も「規則がないから短パンはダメ」としているため、しばらく男子生徒はスカートをはき続けていたのだとか。理由はもちろん、暑いし、抗議活動だし、そしてあれこれ……。でも今回の事件を受けて学校側は、「来年は制服の規定に短パンを加えることも検討」とのコメントを発表していました。

 規定が変わって短パンがはけるようになったら、抗議活動は成功! 短パンをはいて満足顔で元気に登校する男の子たちの姿は見られるのでしょうか。スカートがはけなくなることに若干寂しさを感じる子も、もしかしたらいるかもしれませんね。

文/上野陽子 写真/PIXTA