女性の“性”を感じさせるハイヒールと機能性

(C) PIXTA
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 ハイヒールのときには歩幅が縮むため歩き方が機敏になります。さらに腰の回転度数がますことで、生物学的に男性は女性に魅力を感じるようになるということが科学的にも実証されています。そのため、顧客をもてなすタイプの職種では、「スカート着用」「ハイヒールを履く」といったことが、求められるようになったのかもしれません。

 このロンドンでの出来事が報道された後、英国インディペンデント誌でもこの問題と並べて大手銀行でスカートとハイヒールを強要された女性のインタビュー記事を掲載しました。その女性は「健康上の理由なくして、拒否はできない」告げられたとしています。「なぜハイヒールでなければいけないか」「なぜ女性だけがハイヒールなのか」の正当な理由を告げられないままでした。

 そこには、性差別の問題以上の、「人の自由な選択肢がない」ことが問題の根底にあるように思います。

 「女性にばかり」という意見も含みながら誰もが思うのは、9時間動き続ける「人間」に、長時間歩くために開発されていない靴を要求することがおかしいという考え。この靴で立ち続けるのは無理がある、というのが署名をした12万人誰もの意見の基盤でしょう。

 こうした動きから、政府も何らかの対策を講じるだろうとされています。そして、大きくなっていったヒール問題について会計事務所側は「私たちの意図することではないため、すぐさま関連会社に対処します」とコメントしています。

 「保育園落ちたの 私だ!」「職場のハイヒールをやめたいのは 私だ!」

 「それは、私だ!」の声。ただ一人ふたりが自分の困った問題として騒いでいるだけ……大きな力にそんな風に片づけられそうな出来事が表に出たことで、また一つ、働き方の選択に一石を投じました。女性がファッションとして楽しむ側面を持つのもハイヒールながら、機能性を追求したいときには、やはり男女を問わずに「選択の自由」は欲しいものです。それを広く再認識させてくれたことが、今回の件から私たちが受けた恩恵かもしれません。

文/上野陽子 写真/PIXTA

【参考資料】
BBC News,「ヒールを履いていない」理由に帰宅命じられ ロンドン受付
BBC News, London receptionist 'sent home for not wearing heels'
ロイター、企業のハイヒール義務付けを違法に、英女性の陳情に12万人が署名
INDEPENDET, Business news, London receptionist claims she was refused work at UBS after she declined to wear a skirt and heels
東京都立皮革技術センター、靴の歴史~ヒールの変遷から~, 日本はきもの博物館学芸員, 市田 京子

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