イチローのバットはチョップスティック

 先日、米ユナイテッド航空の国内線でダブルブッキング騒動がありました。乗員数オーバーのために乗客を降ろさなければなりません。その際、一人のベトナム系米国人医師が、強引に引きずり降ろされそうになり、大きなけがを負うという出来事がありました。

 この件も差別ではないかとの声も聞かれました。航空会社の機械による無作為抽出や対応に差別はなかったことと思います。さらには、医師が過去に保護観察処分を受けたことがあるといった報道も出ています。

 ただ、今回引きずり降ろされそうになった原因は「ダブルブッキング」。医師が歯を折り、鼻を骨折し、血を流すほどの行き過ぎた行為を見ると、治安当局職員個人の意識に何があったかは計り知れません。相手が白人の男性だったとしたら、治安当局職員が同様の行為をしたかは、疑問が残るところです。

 こうしてつい「差別では?」と騒ぎたくなってしまう場面は多々あります。しかし、するほうもされるほうも、個人の意識や感覚によるところが大きく、実際に差別なのかどうかの判断も難しいところです。

 海外で活躍するスポーツ選手にも、公にそうした発言がぶつけられるのを目にすることがあります。何年か前にテレビで「イチロー選手のバットはチョップスティック(箸)」などと発言をした野球解説者がいました。その言い方から「食文化に対する侮辱では」など、むしろFOXをはじめとするアメリカのメディアが取り上げるようなこともありました。

 サッカーの中村俊輔選手には「オレの犬を食った」などとヤジが飛んだこともあるなど、他にも解説者やサポーターからの発言も多く見られます。理由は、アジア人だから、肌の色が黄色いから、日本人だから、とにかく外国人に腹が立つ……とさまざま。ですが、自分は何もしていないのにと理不尽に思える理由ばかりです。