もっと本格的に「丸ごとトリュフ」を楽しむなら
高級トリュフを贅沢に楽しめる店もある。希少な白トリュフがこんなに!
取材時はちょうど白トリュフのシーズン。湿度管理された木製の箱の中には旬の白トリュフがごろごろっと陳列されており、客はこの中から好きなものを選ぶことができる。白トリュフは黒トリュフと比べて収穫量が少なく、値段も2~3倍となる。
こうしたトリュフを食せるのは、西麻布にある「マルゴット・エ・バッチャーレ」。“トリュフをまるごと1個買い取り、注文した料理に好きなだけトリュフを削って楽しもう”というスタイルを確立した先駆けだ。
“まるごっと”食べて“キスしよう”という、遊び心を感じさせるネーミングのこの店は、2014年9月にオープンした大人の雰囲気漂うレストランで、三ツ星レストラン「カンテサンス」「かんだ」などの有名店で腕を磨いてきた料理長が、トリュフに合う旬の食材を使い、イタリア料理と日本料理の手法を組み込んだフランス料理として提供している。
マネージャーの岸大介さんによると、同店のオーナーが大のトリュフ好きなのだとか。外食でトリュフ料理を頼むたびにトリュフの量に不満を感じていたオーナー。「もっとトリュフを削ってくれればいいのに…」「隣の客のほうがトリュフの量が多いんじゃないの…」という、そんなモヤモヤした思いから、「それなら自分で好きなだけトリュフが削れる店を作ってしまおう」と、同店をオープンさせたのだという。
このスタイルがグルメたちの共感を呼んだのか、来店客の9割以上がトリュフを1個買い取って、料理に削って楽しんでいるそうだ。店側も、トリュフが欠品しないよう、仕入れのコントロールに努力を惜しまない。
トリュフの提供時期は、9月~10月末まではオータムトリュフ。10月~11月末にかけては白トリュフ、12月中旬~2月末にかけては黒トリュフとなる。6月~8月にはオーストラリア産の黒トリュフも楽しめる。冷凍トリュフは出していないため、それ以外のオフシーズンにはキャビアなどのまるごと食材が提供されるそうだ。
料理は、トリュフと相性のよい食材を多く組み込んだプリフィクスのコースが人気。アラカルトメニューも多く用意されており、この日試した「白トリュフのための手打ちパスタ タヤリン」もそのひとつで、白トリュフを買った人にはぜひ食べてほしいメニューとのこと。タヤリンとは、イタリア北部で白トリュフのシーズンにのみ食べられている細いロングパスタで、味付けはバターとセージ、そして胡椒のみというシンプルさ。まさに白トリュフを削って合わせることで完成する贅沢な一皿だ。
岸マネージャーの「味を楽しむなら黒トリュフ、香りなら白トリュフ」という言葉通り、白トリュフをスライサーで削ると、黒よりも強い華やかな香りが皿の上に漂う。パスタとともに口に入れると、鼻に抜けるトリュフの香り、タヤリンのしっかりした食感、そしてやわらかなバターの風味が相まって、以前訪れたイタリアの情景が脳裏に浮かんだ。フォークが止まらず、はたから見ると、すごい勢いで食べていたに違いない…。
もちろん、料理に負けないような特上ワインも揃っている。バター風味のタヤリンには、同じくバターの風味を持つモンラッシェが合うそうだ。ソムリエと会話しながら、ぜひ上等なマリアージュを堪能してほしい。
コース料理、トリュフ、ドリンクを合わせて、平均の客単価が2万5千円からというから普段使いは難しいかもしれないが、デートや記念日、重要な接待など、特別なイベントで利用してみるのはいかがだろうか。他では経験できないような極上の時間と気分が満喫できるだろう。
以上、利用シーンに応じて使い分けができる「トリュフを自分で好きなだけ削れる店」2店を紹介した。
今回の取材で分かったのは、自分でトリュフを削ってみることで、料理に特別感と気持ちの高揚感をもたらしてくれるということだ。美味しさの増幅だけでなく、食事の時間と場をより楽しいものにしてくれるエンターテインメント性が感じられた。読者の皆さんも、ぜひ実際に体験して、今までにないワクワク感を感じてみてほしい。
取材・文=GreenCreate