本田翼
1992年6月27日生まれ。東京都出身。中学時代にモデルとしてデビュー。2012年から女優業を開始。主な出演作に、映画「FASHION STORY -MODEL」「江ノ島プリズム」「すべては君に逢えたから」「ニシノユキヒコの恋と冒険」「アオハライド」、TVドラマ「GTO」「とんび」「ショムニ2013」「安堂ロイド~A.I knows LOVE?~」「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」「恋仲」などがある。
ヘアメイク:牧田健史
スタイリスト:本間園子

――「起終点駅 ターミナル」は、女優として大きく飛躍する作品になったと思いますが、ご自身ではどんな手応えを感じていますか?

 「撮影している間は、もう精いっぱいで、自分がどういう風に演じられたのか分からなかったのですが、完成した映画を観た時に初めて頑張って良かったなと思えました。『起終点駅 ターミナル』は、1つ1つの作品に対する向き合い方を改めて見直させてくれるような作品になりました」

――撮影は、釧路で行われたのですよね?

 「はい、釧路に1カ月弱行かせていただいて、演じる役への理解がより深まりました。東京にいて、スタジオに行き来する撮影だったら、ここまで理解するのは難しかったかもしれません。今回、役を理解することの大切さを学ぶことができたと思います」

――本田さんが演じた敦子は、とても複雑な背景を持つ女の子ですよね。どのようにキャラクターを理解して、役を演じられましたか?

 「正直、最初は敦子と自分の重なる部分はないかなと思ったんです。でも、浩市さんが演じる完治さんの家に行って、初めて一緒に食事をするシーンで、完治さんが作ったザンギを食べた敦子が一言『おいしい』って言うんですね。もし心がひねくれていたら、素直においしいなんて言わないと思うんです。そのシーンをきっかけに、敦子に共感して演じることができました」

――佐藤浩市さんと共演すると知った時、どのようなお気持ちでしたか?

 「『このチャンスを逃したら、浩市さんと2人でお芝居することなんてもうできないかもしれない』と強く思いました(笑)。もちろんプレッシャーもありましたが、躊躇するよりも、挑戦しなければという気持ちでした」

――敦子は完治を「先生」と呼んで慕いますよね。弁護士の先生ですが、教師と教え子のような関係にも見えて、それがとても素敵でした。撮影現場での佐藤さんと本田さんも、教師と教え子のような関係だったのでしょうか?

 「そうですね、浩市さんは知識が豊富で、いろいろなことを教えてくださったので、自然と先生のような存在になっていましたね」

――教えてもらったことで、特に印象的だったことは?

 「『ラム肉は早朝に絞めて、昼に食うとうまい』ですかね(笑)。そんな教えもありつつ、演技に関することで印象的だったのは、敦子の出身地の釧路の厚岸(あっけし)町に撮影で行った時に、浩市さんが『せっかくだから町を回っておいで。直接それが役に影響しなくても、何か感じるものがあると思うよ』とおっしゃってくださったことです。うまく言葉にはできないのですが、浩市さんのアドバイス通り、確かに感じるものがありました」

本田さんの先生のような存在だったという佐藤浩市さん。
本田さんの先生のような存在だったという佐藤浩市さん。

――この映画は幅広い層の心に訴えかける作品だと思います。完治に感情移入する人もいれば、敦子に感情移入する人も多いと思います。いろいろな世代に観てほしい作品ですが、あえて言うとしたら、本田さんは特にどんな世代に観てほしいですか? そして、どんなことを感じてほしいでしょうか?

 「そうですね、やっぱり自分と同世代の人に観てほしいですね。敦子のように、居場所がないと感じている人も、少なからずいると思いますし、同世代の人たちが『起終点駅 ターミナル』を観たら、自分の生き方を見直すきっかけになるんじゃないかなと。後悔しない生き方をしようとか、親にしばらく会っていない人は会いに行こうとか、そんな風に感じてほしいですね。あと、同世代の人たちに、この作品をきっかけに日本映画をもっと好きになってほしいという気持ちもあります」

――ありがとうございます。本田さんはモデルとして活躍し、女優としてもどんどん幅を広げていらっしゃいますが、お仕事でさらにステップアップするために、どのようなことをご自身に課していますか?

 「何か特別なことをするというわけではないのですが、新しいことにはどんどん挑戦していくようにしています。仕事で叱られるようなことがあったとしても、それは愛なんだとポジティブにとらえています。叱っている側はイラッとするかもしれないけど(笑)。目標を立ててそこに向かうようにすると、目標にばかりとらわれてしまうので、目の前のことを1つ1つやっていくようにしています」

インタビュー写真/小野さやか