エド・スクレイン
1983年3月29日、イギリス生まれ。2004年よりミュージシャンとして活躍した後、俳優に転身。2012年、「PIGGY」でスクリーンデビューを果たす。TVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のダーリオ・ナハーリス役が人気を呼び、Screen International Magazineの“2013 Star of Tomorrow”に選出される。主な出演映画に「バトルフィールド」、11月7日・日本公開の「タイガー・ハウス」などがある。今後は、MARVERLの大人気キャラクターを映画化した、ライアン・レイノルズ主演作「DEADPOOL」で主人公の宿敵エイジャックスを演じるほか、ニコラス・ホルト主演作「Kill Your Friends」など、多くの公開作品が控えている。

――「トランスポーター」は世界的に有名なシリーズなので、映画版で二代目フランクを演じるのは大きなプレッシャーだったと思います。出演することが分かった時は、どのようなお気持ちでしたか?

 「実は、二代目フランクを演じることに、プレッシャーは全く感じなかったんだよ。世界的な超大作映画であっても、誰も聞いたことがないインディーズ作品であっても、TVドラマであっても、オーディションに臨む時は同じ気持ちだからね。プレッシャーがあったとしたら、自分の中から来るプレッシャーだ。僕は割と自分に厳しい方で、気持ちがあまり揺れるということがなく、客観的な気持ちで落ち着くように心がけているんだ。僕は家族を大切にしている“ファミリーマン”で、その立場や人生観みたいなものが、いつも助けになっている。難しい挑戦に直面しても、ネガティブな面に目を向けるんじゃなく、できるだけ頑張って仕事をして、その後は家に帰って、僕の一番大切な仕事、父親業をしっかりやるようにしているよ!」

――完璧な男性像ですね!

 「いやぁ、パートナーと母は、きっと異論があると思うけどね(笑)。常に向上しようと頑張っていることは確かだよ」

――「トランスポーター イグニション」には、ありとあらゆる素晴らしいアクションが盛り込まれていて、すごく圧倒されました。この映画のアクションを全てこなすために、肉体的にそして精神的に、どんな準備が必要でしたか?

 「肉体的な準備としては、まずロンドンで12週間にわたって、体を強靭にすることと、体調と体形を整えるコンディショニングを目的としたトレーニングをやったよ。それから撮影の3週間半前にパリに行き、今回のファイト・コーディネーターであり、僕のメンターでもあるアラン・フィグラルツさんと、1日に9時間ほど、週に5日間の練習を始めたんだ。マーシャルアーツは初めてだったから、かなり大変だったね。クラヴマガやキックボクシングなどを取り入れた、フランクのファイト・スタイルを作り上げていったんだが、その間に感情面も掘り下げていくことにした。僕にとって、肉体的なことと精神的なことはリンクしているからね。フランクを演じるために、肉体と精神の準備を同時に行ったんだ」

見事なアクションを披露しているエド。
見事なアクションを披露しているエド。

――大変だったかと思いますが、楽しむこともできましたか?

 「すごく楽しんだよ! もともとトレーニングは大好きだから、撮影がなくても週に6日間はトレーニングしているからね。作品によって、自分のシルエットを役に合わせて変えていて、肉体作りをする。筋肉量と体脂肪率を変化させているんだ。そうすると、動き方や感じ方が変わってくる。その違いを、スクリーンを通して観客に感じてもらえればと、いつも考えているんだよ」

――フランクはとてもクールなキャラクターで、カッコいい大人の男性ですが、父親には頭が上がらないところは、ごく普通の息子という感じですよね。そこがすごく好きです。そういう面を演じてみて、いかがでしたか?

 「フランクの別の側面を見せる素晴らしい機会になったと思う。弱みを見せることで、より深みのあるキャラクターになったんじゃないかな。父親役のレイ・スティーブンソンさんとはすごく仲良くなって、それは多分観ている人にも伝わると思うよ。僕の一番好きなシーンの1つが、父親とのシーンなんだ」

――フランクの女性への接し方は、どう思いましたか?

 「僕とは全然違うと思ったよ。確かにフランクの仕事や生き方は危険だけど、常識的に考えたら、アンナのようなファムファタルの行動を見たら、ヤバいって思って、近づかないようにするんじゃないかな。僕なら、きっと危険から距離を置くと思うけど、フランクがそうだったら『トランスポーター』の続編はできなくなっちゃうね(笑)」

――本作でフランクは、女性の依頼人の言いなりになるしかならない状況に陥りますよね。私はあなたが「ゲーム・オブ・スローンズ」で演じたダーリオ・ナハーリスも大好きなのですが、彼も女性に従うキャラクターです。エドさんご自身は、女性に従うことに抵抗はありますか?

 「女性に従うことに関しては、僕の現実の人生でもよくあることだよ(笑)。子どもの頃は、もちろん母に従っていたし、今はパートナーが僕を導いてくれることが多い。彼女の影響は、とても大きいんだ。仕事や、人生のいくつかの面においては、自分でしっかりコントロールしないといけないけど、僕は女性をコントロールしたがるような“アルファ”タイプじゃないからね。ダイナミックな女性陣にコントロール権を渡すことに、全然抵抗はないよ!」

――ますます理想的な男性像ですね! このインタビュー記事をきっかけに、さらにファンが増えると思いますよ~(笑)。あなたはミュージシャンから俳優に転身されましたが、お話を聞いていると、本当に楽しんで演技のお仕事をしているようですね。

 「演技における全ての側面が好きなんだ。俳優によっては、プロモーションがつらいという人もいるけど、僕は今日のような機会を与えられることに感謝しているし、みなさんとお話しできるのは、とても楽しいと思っているよ。以前から夢だった日本に来ることもできたし、素敵な出会いもあるしね。だけど最も好きなのは、やっぱり現場なんだ。脚本が完成して、監督をはじめとするスタッフ、役者たちが全てこれでうまくいくと思って、いざ撮影をしてみたら、うまくいかなくて、『さぁ、どうする?』という、そんなプロセスでさえ好きだ。その状況をより良いものにしていくために、みんなであれこれ模索しながら、現場で作り上げていくという作業が何よりも好きなんだよ。僕はもともとハッピーな人間だけど、現場での一瞬一瞬がものすごく幸せだし、今回のフランクのように笑顔を見せないストイックなキャラクターを演じている時でも、表向きはその表情をキープしつつ、心の中は超ハッピーなんだ(笑)」

劇中、フランクが超絶ドライビング・テクニックを見せる車アウディS8と。
劇中、フランクが超絶ドライビング・テクニックを見せる車アウディS8と。

インタビュー写真/杉 映貴子